<GILLIE>株式会社ギリー
GILLIE CLUB
料理とワインの組み合わせ 第6回 レポート
〜白のソーヴィニヨンと赤のピノ・ノワール飲み比べ〜
<ご報告>
ギリークラブの人気シリーズ『料理とワインの組み合わせby Shinya Tasaki』
今回で何回目かなと思ったらもう6回目となっており、企画者している渡辺もちょっとびっくりしました。何時にも増して田崎さんはサービス精神旺盛、さすが世界一のソムリエです。
当日田崎さんは『私はいつも店にいるときはお客様にサービスしています』と言っていましたが、このギリークラブでは企画から料理とワインの選定、そしてサービススタッフの指揮まで全てご自身でなさってくれます。
当日渡辺が店に到着したときは田崎さん自らスタッフを集めてのミーティング中、その厳しい雰囲気にしばし店の外で待たせて頂いた程でした。そして3時間以上も超多忙な田崎真也氏が我々だけのために時間を割いてギリークラブを開催、本当に有難い限りです。
そのように田崎さんご自身の指揮で行う会ですが、席に限りがあるので登録メンバーの方にしか案内できず、それも先着順での受付なので参加できない方が出てくるのは主催者として大変心苦しく思っています。今後も何らかの工夫をして多くの方に味わって頂きたいと考えています。
今回も常連さん(ギリークラブに参加してSの常連になった方もいらっしゃいます)、初参加の方(特に今回も広島や大阪からわざわざこの為に東京にいらっしゃった方もいらして感激でした)久しぶりの方、初対面の方が同席した各テーブルは会が始まる前から和気あいあい、ワインが入るにつれて、それはそれは大変な盛り上がりでした。
人数が多いから出来る、9種類のワインの飲み比べ、それも真剣な“テースティング会”ではなく、“楽しい雰囲気の中で料理とワインの相性を体験し、楽しむ食事会”という企画、皆様大いに堪能して頂いたようです。
田崎さんという大物との共同企画、今後も形を変えて続けていければと思っていますし、今秋開店予定の新しいお店でも展開を考えたいと思っています。
皆様、どうぞ田崎真也さん、阿部誠さんがいらっしゃるレストラン“S”、ウイークデーは比較的取りやすいということですが、何せ人気店です。どうぞ早めにご予約なさってください。(勿論週末のご予約はもっと早めに)。
そのほかのスタッフの方のワインや料理に関する知識も素晴らしいです。一回個人的にS体験されることもお勧めします。
今回もソネットの齊藤彰子さんにレポートをお願いしました。さすがワイン好き編集者、素晴らしい出来です。本当に有難うございました。どうぞご一読下さい。このような会でした。(渡辺幸裕)
料理とワインの組み合わせ 第6回 レポート
〜白のソーヴィニヨンと赤のピノ・ノワール飲み比べ〜
2004年4月24日『S』にて
ワインにちょっと懲りだすと、まずブドウ品種をから理解したくなるもの。レストランでで「この白は、ソーヴィニヨン・ブランの特徴がよく出ているね。」とか「赤はピノ・ノワールが好きなので、何かおすすめはあるかしら?」なんて言っている人たちを、ちょっとうらやましく感じたことはありませんか?
第6回は、ブドウ品種とお料理の相性を探るというテーマでの開催です。実は第4回目には「白:シャルドネ、赤:カベルネ・ソーヴィニヨン」で行いましたが、今回は「白:ソーヴィニヨン・ブラン、赤:ピノ・ノワール」の組み合わせで行われました。
ご存知のように、会場となったレストラン『S』では「ソムリエがプロデュースするレストラン」ということで、値段ではなく、味や好みでワインを選べるようにと、お料理と同じ値段の3,800円のものが300種類以上リストアップされています。それも世界各国からの選りすぐりのものばかり。今回も「同じブドウ品種でも、ワインは世界中で作られているのだな」と体感できるラインアップとなりました。
では当日の田崎真也さんの解説をご紹介しましょう。
◇アミューズに合わせて◇
<NV>Cava Extra Brut Penedes Blanc de Blancs
Colet
本日のアミューズは、薄いパイ生地の上に、甘い玉葱と細かく刻んだアンチョビとオリーブ、そしてフランス産の生ジロール茸を使った一品。ジロール茸は、日本にはない品種で、春と秋、2回とれる茸だそうです。これに酸味のやわらかいスパークリングワインのCavaをあわせて。ちなみに、スパークリングワインは収穫年を表示しません。NVとはノン ヴィンテージのことです。
=白:ソーヴィニヨン・ブラン=
◇『サーモンと黒鯛のマリネ シーククワーサー風味』 に合わせて◇
<2002>Sancerre Blanc
Gitton
実は3つめのグラスに注がれたのが、このワイン。田崎さんいわく「これが、本日の白のテーマ、ソーヴィニヨンの一番基本になる味だと思ってください。」とのこと。フランスのロワール河上流のサンセールのもの。サンセールといえば、ソーヴィニヨン種で製造される白ワインの有名な産地ですが、ここでのブドウ栽培や醸造の方法が、世界各地での基本になっているそうです。もともと「ソーヴィニヨン」は香りの中に木の葉、カシスの芽の香りと表現する青々しい葉の印象や、みかんのような柑橘系の香りのさわやかなすっきりした印象が特徴で、このサンセールのものは、青リンゴのような香りや、ミネラル感のような後味、しめった石灰のような、(「火打石の香り」、とか表現するそうですが)印象をもっているそうです。青い磯の香りのする、さっぱりとしたマリネ、しかもシークワーサーといったさわやかな柑橘系の風味によく合います。
<2003>Marlborough Sauvignon Blanc
Kim Crawford
マールボロは、ニュージーランドの南島、北に位置する地方。昼夜の寒暖差があり夜冷え込んで、雨が少ないという、ブドウ栽培に適した土地で、もともと白ワインの栽培の盛んなところですが、近年、あの「ルイ・ヴィトン」がソーヴィニヨンのワイナリーを作って世界的に売り出して、一挙にメジャーになったのだとか。今やソーヴィニヨン本来の香りが一番出ているのは、原産のボルドーやロワールのものではなく、マールボロ、という評判があるほど。ソーヴィニヨンの特徴である青い草の香りを持つのはもちろんですが、サンセールと違い、トマトの葉、ヘタといった野菜の香り、緑色した木の実グーズベリーといった果物の香りのさわやかさ、酸味が強いといわれています。
<2002>Coastal Durbanville Sauvignon Blanc
Durbanville Hills
ダーバンヴィーユは、南アフリカ、ケープタウンの北東30キロのところにある地域です。ここは緯度でいえば、ほぼオーストラリアのシドニーと同じで温帯ゾーンに属し、南向きの斜面で白ブドウを栽培しています。もちろん南半球ですから、北半球の南仏では白ブドウを北向き斜面で栽培するように、涼しいわけです。
南半球のソーヴィニヨンは、一般的にトマトの香りが強いといわれていますが、南アフリカは日照時間があるので、どちらかといえばニュージーランドのものよりはサンセールのものに近いかもしれない、とのことでした。
<2002>Yarden Sauvignon Blanc/Semillon
Golan Heights
本日の白ワインのうち、これだけがソーヴィニヨン100%ではなく、セミヨンをブレンドしたもの。ボルドーではソーヴィニヨンはセミヨンとブレンドすることが多いですが、これはイスラエルはゴラン高原のワインです。
イスラエルは国土は広くないのですが、乾燥しており、標高100mごとに温度差があり、特にシリアとの国境に近い標高800mゴラン高原は、上のほうでは白ブドウを、下のほうでは赤ブドウを栽培しています。
さわやかなソーヴィニヨンをメインに、セミヨンをブレンドすることで、まろやかさが加わりバランスのよいワインになっています。さらに、気温も高く、日照量もある地域で作られたワインなので、草や葉のような青々しさよりは、華やかな果物の香りが強く出てきます。
ワインだけを味わうのと、お料理をいただきながら味わうのでは、印象が違ってくるから面白いものです。参加された皆さんは、それぞれ好みが分かれたようですが、白ワインで、さわやかなものが欲しかったら、本日の基本の「サンセール」を頼んでおけば、間違いないようです。同じドライ系のシャブリよりリーズナブルで、しかも御料理の邪魔をせず、飽きがこない、という印象でした。
=赤:ピノ・ノワール=
◇『鳩のロースト トリュフの香り 赤ワインのリゾットを添えて』に合わせて◇
<2000>Rheinhessen Spatburgunder Classic
Schales
ピノ・ノワールはブルゴーニュ地方原産のブドウ品種です房が小さく、小粒の実が密集して、皮があまり厚くないので、成熟期に雨が降るとカビが出やすく、病気にもあまり強くない品種だそうです。しかしボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンと双璧をなす重要な赤ワイン品種です。種が少なく、色が明るく、渋みが少ない。まろやかで果実味があってなめらかな印象。熟成を遅くする渋み、酸味が少ないので、熟成が早いのが特徴です。 冷涼な気候のドイツでは赤ワインはなかなか栽培が難しかったのですが、皮肉なことに近年の地球温暖化の影響で、栽培地帯が北上し、ドイツでもだんだんよい赤ワインが作られるようになってきました。 このラインヘッセンのワインは一般的なピノ・ノワールより濃い色調で、赤いベリー系。ラスベリーといった果実の香りが豊かでさわやかな酸味をもち、渋みもなめらかです。なお、「シュペートブルグンダー」とはドイツの代表的なブドウ品種名で、ピノ・ノワールと同一品種のことです。
<2001>North Central Coast Pinot Noir
Nonterey
モントレーはアメリカ西海岸、サンフランシスコより南にあり、春と秋に雨が少なく、温暖な気候でありながら、寒流の影響で夜は12,3℃と冷え込むというブドウ栽培には好条件の揃った土地柄。しかもブルゴーニュ地方より日照時間が長いので、収穫の時期早くするか遅くするかで、ブドウの熟成度をコントロールできるそうです。ただ、収穫は夕方からはじめて明け方までにしないと、糖度を一定に保てないのだそう。朝から収穫をはじめると、その日の収穫分の糖度が朝型と夕方ではバラつきが出てしまうほどなのだそうです。このワインは枯葉や土の香りといった、熟成したピノ・ノワールの特徴的な香りを感じることができます。
<2002>Yarra Valley Pinot Noir
Yarra Ridge
オーストラリア大陸の南部、ヴィクトリア州、メルボルンの近くで作られているワインです。オーストラリアでは近年ピノ・ノワールが注目されだしているのだとか。このワインは濃い色調とタバコ、紅茶、茸、土の香りといった熟成香りや、なめし皮のような動物的な香りをもっています。
<2000>Mercurey Framboisiere
Joseph Faiveley
フランス、ブルゴーニュ地方のコート シャロネーズ地区のAOCの1つメルキュレイのものです。メルキュレイはピノ・ノワール種を使用した赤ワインを産出している地域です。
果実の香りはすでに出ていますが、熟成香である動物的な香りは、口の中に含むと、やや出てきますが、まだ「閉じ込められている」状態。2000年のものですから、これからの熟成がたのしみです。
ピノ・ノワールはそもそも熟成が進むと「動物的な、野性的な香り」が出てくるのが特徴です。渋み、スパイシー感は少なく、土とか茸とかいった香りに近いので、今回のお料理である鳩のような野生味や茸などの食材に合うのだそうです。ちょうど今回参加されていた料理研究家の山本益博さんが、「鳩の付け合せ、赤ワインとレバーで作ったリゾットを口に含んでワインを味わうと相性がわかるよ」とアドバイス。なるほど、確かに味わいが変わり、まさに料理との相性を簡単に比較できます。1つのお料理をいろいろな角度から味わうことができるんですね。
ソーヴィニヨンにしてもピノ・ノワールにしても、同じブドウ品種で、こんなに味わいも香りも違うものなのか、ということが飲みなれていなくても、よくわかります。8つ並んだグラスに残ったワインの量で、それぞれの好みが一目瞭然。1回の食事で世界各地のこれだけの種類のワインをいただける醍醐味を、今回も十分堪能することができました。
デザートはエポワスというブルゴーニュ地方のチーズを使ったケーキ、フルーツのコンポート添え。主宰のギリー渡辺さんから「デザートとデザートワインの組み合わせも面白いかもしれませんね」という発言に、あちこちから賛成の声があがっていました。
次回の企画も期待できそうです!