服部・ギリー塾『3月の野菜』
〜かぶの食べ比べと、3月の美味しい野菜の料理〜
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<ご報告>
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服部・ギリー塾、今年2回目の会を実施しました。詳しくは以下のレポートにありますが、今回もまた素晴らしい体験、そして出会いがありました。
工藤さんのレポートをお読みください。
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第8回を迎えた「食材食べ比べ」シリーズ企画。これまで、なす、じゃがいも、ネギ、トマト、きゅうり、きのこ、ほうれんそうを食べ比べました。今回のテーマ食材は「かぶ」です。
このシリーズは、回を重ねるごとに、前回も参加したというメンバーが増えています。もちろん、初参加の方もたくさんいるのですが、「食べ比べを体験して、初めてはっきりと味の違いを感じられた」と、一度わかると快感になり、はまってしまう方が多いようです。茂木健一郎博士いうところの「アハ体験」でしょうか。
そのほか「西澤先生の料理を食べるには、服部栄養専門学校に通学するか、ここに来るしかない」という正直な方も。「絶対におもしろいから、とにかくおいでよ」と新規参加者を連行?した方もいました。
さっそく、かぶの基礎知識を簡単に学びます。レクチャーしてくれたのは、オイシックス商品開発チーム青果開発グループ・産地開発マネージャーの小堀夏佳さん。すばらしい野菜を求めて全国各地を巡ること7年。週1回以上は農家さんの元を訪れ、1000軒以上の農家さんと交流のある、パワフルな女性です。
かぶは、なんと弥生時代から食べていた、日本人にとって親しみのある野菜のひとつです。原産地は、アフガニスタンあたりか、地中海沿岸の南ヨーロッパを加えた地域といわれ、ヨーロッパでは紀元前から栽培されてきました。
これが大陸を通って日本に伝わったのが弥生時代。日本で最初に書物に登場するのは「日本書紀」で、持統天皇の7年(西暦693年)に、五穀(主食)を補う作物として、栽培を推奨するおふれが出されたと記されています。
今では世界中の温帯地方で、広く栽培されているかぶ。日本は、古くから土着して多くの地方品種が発達した結果、世界的にみても品種発達の重要な中心地となっているそうです。
日本の地方品種は、大阪の天王寺かぶや高知の弘岡かぶ、東京の金町小かぶなど80品種もあるそう。東では西洋系の赤いものが、西では日本系の白いものが多く栽培されています。かぶの旬は春と秋で、春かぶはジューシーさをいかした生で、秋かぶはかぶら蒸しなど蒸し料理がおすすめです。
今回、食べ比べをしたのは、下記3種類のかぶです。
1:ピーチかぶ/千葉県
さっくりさわやかな歯ざわりと、ほんのりとした甘味が特徴。ジューシーで甘味がもっとものる春は、ピーチかぶが一年でいちばんおいしい季節です。厚めに切って、ドレッシングなど何もかけず、かぶそのままの味を楽しむのがいちばん。ぬか漬けにも向いています。一方、加熱し過ぎると溶けてしまうため、煮込み料理に加える場合は、火をとめてから加えるのがコツです。
2:肉質がやわらかい泥つきかぶ/栃木県
秋に種をまいて冬の寒さをくぐらせ、じっくり育てたかぶ。むっちりと目の詰まった肉質で、かぶら蒸しなどの加熱料理に特におすすめです。かぶ特有のえぐみがまったくないので、さっと煮たり、炒めたり、漬け物にしたり、薄く切ってサラダにしたりと、どんな料理にも使えるオールマイティーな存在です。
3:スーパーで買った普通のかぶ
第7回で「ほうれんそう」を食べ比べしたとき、参加者から「それぞれの品種の個性の違いはわかるけど、どれもおいしくて、レベルの差がわからない」「いつも食べているものと、比べてみたい」という声が多く寄せられたため、今回から登場したのがこれ。ごく普通のスーパーで、当日購入してきたものです。
それでは、試食です。まずはいつものように、生のまま皮つきを味わいます。1はみずみずしく、皮もしっとりやわらか。2はちょっと辛味があり、肉質は1に比べてしっかりしていて、かぶらしいすっきりした味わいです。3は苦辛いようなえぐみがあり、とりわけ1を食べた直後に口にすると、喉の奥にえぐみが残りました。
「これはすごいね」「これだけ差があれば、わかりやすい。スーパーのものと食べ比べたのは正解だね」「いつもスーパーで買っているかぶは、こんな味だったんだね」と、参加者は初っぱなから大盛り上がり。
引き続き、焼いたもの、蒸したものへと食べ進みます。
生でダントツにおいしかったのは1。焼くと、2から辛味が消えて甘味が引き出され、歯ごたえのある食感が引き立ちます。1は、焼いてもみずみずしさが失われませんでした。蒸すと、1はとろとろととろけて、やややわらかすぎな印象。2は、いよいよ甘味が際だち、やわらかさを増します。
3は、焼くとえぐみは薄れたものの味わいが平板になり、蒸しても固さは残ったままうまみが抜け、もそもそした食感が目立ちました。
「かぶがいちばんおいしいのは、くきの下の球になっている部分です。かぶの個体差や、切り方によっても、味は違います」と小堀さん。
それを聞いた参加者から、こんな話がありました。
この会は、西澤先生あっての会ですね。個人の自宅で、同じような食べ比べをするとします。食材は、オイシックスから「ピーチかぶ」と「肉質のやわらかい泥つきかぶ」を取り寄せて、スーパーでかぶを買ってくれば、個人でも一応揃えられます。
でも、それを同じ厚みに切り揃え、それぞれの個性がもっとも際だつ時間を見極めて焼き、加熱しすぎないギリギリまで蒸す。それも全種類をまったく均等に。こんなことは、個人では決してできません。
西澤先生は、くきの下のおいしい部分を含めて、全員が同じ味を味わえるような切り方で、3種のかぶを提供してくれました。事前に何度も試行錯誤してくださった西澤辰男先生、朝から仕込みにかかってくださった助手のみなさん、本当にありがとうございます。
さて、食べ比べが終わると、会場はいよいよ盛り上がりを増します。ついに、西澤先生ご考案メニューの試食です。
前回から、テーマ食材に加えて、月がわりのおいしい野菜もメニューに使われるようになりました。3月のおいしい野菜は、下記5種です。
・花チンゲンサイ
・塩トマト
・シシリアンルージュ(クッキングトマト)
・フルーツ玉ねぎ
・赤土新じゃが
これらがどう調理されるのでしょう。期待が高まります。
今夜のメニューは下記の通り。
・かぶの葉と皮、油揚げのいためもの
・ピーチかぶ ホワイトスープ
・かぶら蒸し
・肉じゃが
・シシリアンルージュのニョッキ フォンデュ・ド・トマト
さらに、今回はデザートに、サブテーマがありました。今がおいしい柑橘類の食べ比べです。食べ比べしたのは以下の通り。
・晩白柚(ばんぺいゆ)
・桶柑(たんかん)
・日向夏(ひゅうがなつ)
どれもめずらしい柑橘類で、こちらも楽しみです。
最初に登場した「かぶの葉と皮、油揚げのいためもの」は、西澤先生が「こんなにおいしいかぶの皮や葉を使わないともったいない」と、急遽アレンジしたもの(よってレシピがありませんでした)。
また、塩トマトとフルーツ玉ねぎの味わいを知るため、塩トマトは、くし形に切ったものと、皮をむいてミキサーにかけてから漉したもの、玉ねぎは薄くスライスして水にさらしたものと、さらしていないものの食べ比べがありました。
とりわけ塩トマトのジュースといったら、一流レストランで出されるガスパチョをシンプルにしたような上品さです。塩も油も調味料は一切なし。参加者の方も「本当に塩を入れていないの?」「どうしてこんなに甘味が引き立って、口当たりがマイルドなの?」と、大騒ぎ。私個人的には、今夜の食材でもっとも、塩トマトに惚れ込みました。
今回いただいた料理のレシピを、以下に記載します。この通り再現するのはむずかしいのですが、エッセンスだけ学んで、お好みでアレンジしてください。レシピはすべて4人分です。
また、レシピのない「かぶの葉と皮、油揚げのいためもの」は、西澤先生に口頭で作り方を習いました。レシピの下に書き添えますので、ご参照ください。
ちなみに、今夜のおみやげはピーチかぶと塩トマト・・・の予定でしたが、なんと、最高のものがまだ出揃わなかったとのこと。とはいえ、じゅうぶんおいしいものばかりでしたし、自然が相手のことですからやむを得ないのですが、そこはさすが小堀さん。一切の妥協はありません。最高のものが揃い次第、自宅に送ってくださるというプレゼントつきでした。
送っていただいた最高のピーチかぶの皮と葉を使い、「かぶの葉と皮、油揚げのいためもの」(それ以外は難しそうだったので)を自宅で再現してみました。見た目の美しさはかなり劣るものの味は大満足。箸休めに、お酒のお供に、ぴったりの一品になりました。とても簡単なので、おすすめです。
●ピーチかぶ ホワイトスープ
【材料】
ピーチかぶ 皮をむいて350g
強力粉 25g
バター 25g
牛乳 500cc
生クリーム 50cc
塩・胡椒 少々
ナツメグ 少々
ローリエ 1枚
(飾り用) ピーチかぶ 1個
花チンゲンサイ 4本
黒胡椒
【作り方】
- ピーチかぶの皮をむき、小角に切る
- 鍋に牛乳を入れ、1を加えて火にかけ、やわらかくなったらかぶをミキサーにかける
- 鍋に強力粉とバターを入れてベシャメルソースをつくり、2でのばす。塩・胡椒・ローリエ・ナツメグを入れて味を調える。仕上げに生クリームを入れる。
- くし形に切ったピーチかぶと花チンゲンサイを湯がき(当日は、ピーチかぶはスープで煮ましたが、湯がくだけでもだいじょうぶです)3に浮かべて黒胡椒を添える。
●かぶら蒸し/肉質のやわらかい泥つきかぶを使っています
【材料】
甘鯛 4切れ
かぶ 8個
きくらげ 適量
百合根 12枚
わさび
卵白 1個分
塩 少々
(銀あん用) 出汁+かぶの汁 2カップ
塩 小さじ1/3
薄口醤油 大さじ1
みりん 少々
葛粉 適宜
【作り方】
- 甘鯛の切り身にうす塩をして、酒蒸しにする
- きくらげを戻して千切りにする
- 百合根はほぐして、ざっと湯を通す
- かぶは皮を厚くむいて、おろし、ざるに乗せて水気を軽くとる
かぶの汁は銀あん用にとっておく
- 卵白を軽く泡立て、おろしたかぶ、きくらげを加え、塩少々を加えてさっくりと混ぜる
- 器に甘鯛と百合根を入れ、5をかけて蒸す
- 銀あんの材料を合わせ、水溶きの葛粉でとろみをつける
- 蒸し上がった6に7をかけ、わさびを乗せる
●肉じゃが
【材料】
じゃがいも 600g
牛バラスライス 300g
にんじん 1本
玉ねぎ 2個
白滝 1玉
菜の花 1/2わ
出汁 6カップ
酒 100ml
醤油 100ml
みりん 100ml
砂糖 大さじ3
【作り方】
- じゃがいもは皮をむき、大きめのひと口大に切る
にんじんは皮をむき、乱切りにする
玉ねぎは、大きめのくし形に切る
牛肉は、食べやすい大きさに切る
- 白滝は、食べやすい長さに切って熱湯で湯がき、流水にさらす
- 菜の花は湯がいて冷水にとり、水気を切っておく
- 鍋に油をひき、肉をさっと炒める
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、白滝を加え、油をからめたら、出汁と酒をひたひたになるまでそそぐ
- 煮立ってきたら砂糖とみりんを加え、落としぶたをする
材料に火が通ったら、最後に醤油を加えて、ひと煮立ちさせる
●シシリアンルージュのニョッキ フォンデュ・ド・トマト
【材料】
(ニョッキ) 裏ごししたじゃがいも 150g
湯むきしたトマト 60g
塩・胡椒 少々
卵黄 1個
小麦粉 60〜70g
(フォンデュ・ド・トマト) 湯むきしたトマト 12個
カットしたトマト 8個
オリーブオイル 適量
ニンニク 1かけ
塩・胡椒
タイム 1本
EXVオリーブオイル 適量
【作り方】
(ニョッキ)
- じゃがいもをゆでで皮をむき、裏ごしする
トマトは湯むきして、ミキサーにかける
- ボールに1と卵黄を入れ、固さを調節しながら小麦粉を加え、塩・胡椒で味を調えて、生地をつくる
(フォンデュ・ド・トマト)
- トマト12個を湯むきして小角に切る
- 鍋にオリーブオイルとつぶしたニンニクを入れ、オリーブオイルにニンニクの香りがついたら1を入れ、タイムを加え、塩・胡椒で味を調える
- 大きめにカットしたトマトと湯がいたニョッキを2にいれてからめ、仕上げにEXVオリーブオイル(当日はバジルオイルを使用)をかける。
●おまけ/かぶの葉と皮、油揚げのいためもの
- かぶの皮は千切りに、葉は3つに切る
油揚げも千切りにする*特に油抜きなどは不要です
- フライパンにごま油と鷹の爪を入れ、かぶの皮→油揚げ→かぶの葉の順序に加え、みりんと薄口醤油、塩を適当に。*かぶの甘さがあるので、砂糖は不要。
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生かぶの食べ比べ |
焼きかぶの食べ比べ |
蒸しかぶの食べ比べ |
かぶの葉と皮、油揚げのいためもの |
ピーチかぶ ホワイトスープ |
「かぶら蒸し |
肉じゃが |
シシリアンルージュのニョッキ フォンデュ・ド・トマト |
塩トマトとフルーツ玉ねぎの味わい |
フルーツ |
フルーツ |
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<ご案内>
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「野菜を知り、美味しい食べ方を学ぶ企画」、前回から内容が少し変わっています。
1月開催の概要はここにあります。
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2009/0123.shtml
一つの野菜を食べ比べ、種類、美味しさを知った後に、それも含め、この季節に美味しい野菜料理を味わいます。世界でも稀なほど四季がはっきりしている日本、旬の時期に採れる野菜を知るのは、季節を愛でる事です。
旬を知り、野菜の知識を仕入れ、美味しい調理法を知る、当日召し上がった料理のレシピも差し上げます。家で料理を作り、弁当にも活用する、これは食の基本です。
料理講習会ではありませんので、エプロンも不要です。食材を知り、美味しい料理を学び、皆で食べて交流し、マスコミの方に学んで頂き、企画の参考にして頂きたい、そんな主旨から始まった会です。
マスコミ、生産者、流通、料理研究家、食品外食関係者、食に関わる方が一緒に食べ、交流する事は意味があります。体験した事を、それぞれの方がご自身の企画に生かして下さい。
今回の食べ比べは“かぶ”です。
・肉質がやわらかいかぶ、
・ピーチかぶ、
・当日スーパーで買うかぶ、
・3種かぶのの食べ比べ
−生(皮あり、なし)
−焼く
−蒸すどんな差があるのでしょうか?
・かぶの美味しいメニュー
−かぶの皮と葉っぱ炒りもの(ベーコンやしらすなどのアクセントも入る予定)
−かぶと花チンゲンサイのスープ
−かぶら蒸し
3月の美味しい野菜は以下です。
・花チンゲンサイ
・塩トマト
・シシリアンルージュ(クッキングトマト)
・フルーツ玉ねぎ
・赤土新じゃが
それぞれの生産者の方が気合いを入れて作った作品です。
・旬の食材メニューですが、
−塩トマト(生、ジュース)
−フルーツ玉ねぎ(生)
−新じゃがとフルーツ玉ねぎのコロッケ or 肉じゃが
※こちらは試作をしていただいてから、良いほうを採用
−トマトソースパスタ
服部学園の西澤先生が今回も張り切っています。
そして、今回はデザートとして柑橘類を試食します。
・晩白柚(ばんぺいゆ)
・桶柑(たんかん)
・日向夏(ひゅうがなつ)
なかなか口に入れる事のないもので、楽しみです。
この時期に美味しい野菜を学び、皆で食べて交流する、そんな意義ある食材交流会、どうぞご期待下さい。
マスコミの方が優先ですが、、食品企業、外食産業などの方、料理に興味のある方、マーケッター、クリエイター、オイシックスや服部学園にご興味のある方、どうぞ奮ってご参加ください。
家庭で料理を作るのが格好良い時代です。
※場合によっては一部料理内容が変更になることもあります。主旨が変わるような変更はいたしませんが、自然相手の事ですので、どうぞご了解ください。
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<参考サイト>
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●オイシックス
http://www.oisix.com/
●服部栄養専門学校
http://www.hattori.ac.jp
●野菜果物辞典 かぶ
http://www.yasaiyasai.com/item/53.html
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<実施概要>
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●服部・ギリー塾『3月の野菜』
〜かぶの食べ比べと、3月の美味しい野菜の料理〜
●日時:3月13日(金)
18:30 受付開始
19:00 セミナー開始
19:30 食事・交流会開始
21:00 終了
●会場 服部栄養専門学校 別館6階試食室
渋谷区千駄ヶ谷5-25-4 TEL 03-3356-7171
http://www.hattori.ac.jp/facility/access/index.html
●ゲスト:小堀夏佳氏(オイシックス 産地開発マネージャー)
●調理:西澤辰男先生(服部調理専門学校 調理技術部 日本料理)
●会費:ギリークラブ会員 7,000円 ビジター9,000円
●定員:15名 (申込先着順・ギリークラブ会員優先)
●応募締め切り:3月6日(金)
※それ以前でも満員の際には締め切ることもあります。
※満員の際にはキャンセル待ちもお受けします。
※準備の都合上3月6日(金)以降のご欠席は会費をご負担頂きます。
ご了解下さい。
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