小山裕久の日本料理講座 レクチャー&交流会
今回のテーマ:「漆器と日本料理」
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<ご報告>
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恒例となった「文化としての日本料理講座」平日の昼間にも関わらず、今回も大いに盛り上がりました。地道にこういうセミナーをしていく事が大切、そんな気持ちを新たにした会です。
担当ライター、工藤史歩さんのレポートです。
日本料理から日仏の交流を深めるNPO法人日本料理文化交流協会。ご存じ小山裕久氏が理事長を務め、積極的な活動を展開しています。2007年から活動を開始した日本料理普及イベントは毎回パリで大成功を収め、2009年は、3回のパリ・セミナーを実施。3回目となる10月には、活動内容を拡大し、パリで活躍する5店の日本料理店の賛同を得て、「第1回日本食文化フェスティバル」が開催されました。
ちなみに各店のセミナーは以下の通りです。
「虎屋」の和菓子教室
とんかつから巻き寿司まで幅広い日本料理を提供して、ビブ・グルマンにも選ばれた「善」の巻物講座
京都・たん熊を経てパリで20年来日本料理を提供し続けている名店「衣川」の支店「花輪」の弁当講座
高知県安芸市に本店を持ち、パリで唯一のうどん専門店として1992年にスタートした「国虎屋」の天ぷらうどん講座
オンワード樫山が手がける、日本のファッショニスタやパリのセレブリティにも人気の手打ち蕎麦「円」のそば料理講座
以上の豪華なラインナップ。もちろん全試食つきです。
そして、5日間に及ぶ「日本食文化フェスティバル」を締め括るメインイベントとして行われたのが、京漆器・象彦副社長の西村毅さんを迎えて行われた、西村さんと小山さんの講演&対談会「漆器と日本料理」です。
漆器は、海外では「ジャパン」と呼ばれる、日本の代名詞的存在。1661年創業の「象彦」は、三百余年の歴史と伝統を受け継ぐ日本漆器の象徴です。象彦の漆器は、まさに芸術品。蒔絵や沈金といった職人技で彩られた漆器に、小山さんの料理を盛り付け、漆器と日本料理の出合いに見る日本料理の芸術性に触れるのが、この「漆器と日本料理」の主旨です。
象彦副社長の西村さんが、海外で漆器について講演するのは、今回が2度目。1度目は米ニューヨークで5分ほどでしたが、今回はいきなり2時間30分の長丁場。しかも「フランス人へのリップサービスで、マリー・アントワネットも漆器のコレクターだったという話をしたら、フランス人から、集めたのはアントワネットの母親であるオーストリア人、マリア・テレジアだと言われてしまった。こちらが驚くほどよく知っていました」と笑います。
この講演&対談会は、フランス人はもちろん、参加した日本人の料理人でさえ驚くほど奥深い世界。100名以上のフランス人が参加して、熱心な質問が相次ぎ、関心の深さを感じたそうです。
たまたま新婚旅行でパリを訪れていた漆器職人が、「日本でもこんな会はない、すばららしい!」と感激されていたそう。そんな講演&対談会の、東京版となりました。
象彦に伝わる芸術品の漆器と、小山さんの料理の取り合わせを、写真で見ていきます。一例を挙げますと、「青貝盛皿」に「京野菜」をそのまま乗せたもの、「青漆一閑喰籠」の蓋を外すと「鴨ロース蒸煮」が表れます。「波蒔絵吸い物椀」には、厚くたっぷりして、四方に花開いた「ぼたん鱧」、鮮やかな朱の「蕾盛器」には、意表を突く「カリフォルニア・ロール」、なかでも圧巻だったのは、300年以上の歴史を持つ「蜀江錦花見重 重箱・徳利・取り皿・盃」に「口取十種」です。
あるものは、素材に何ら手を加えることもなくそのまま、あるものは繊細に、あるものは大胆に。形の豊かさ、絶妙な色合いや素材の取り合わせ、そして空間の取り方。芸術品の漆器が、料理との出合いによって、生き生きと精気を放つのがわかります。
象彦の所蔵品のなかには、古くは淀君が使われていたという漆器もあり、今回使ったもののなかには、350年から200年前のものもあるそう。なかには、初めて料理と出合った漆器もありました。
続いて、漆器の製作工程について、西村さんからレクチャーがあります。これもまた、実際に現場で見たいような充実したものでした。
「日本人の日本知らず」が、この会の裏テーマのようになっていますが、今回も心から「日本人の日本知らず」を実感します。日本料理は、世界で唯一、食器を持って食べるマナーでも知られていますが、熱いものを熱いまま、冷たいものを冷たく保つ漆器は、日本料理とは切っても切れない縁があります。
「チャイナと呼ばれる磁器に吸い物を入れたと想像してください。これは熱くて手に持てないし、唇も付けられない。日本料理の華と言われる椀物がここまで高みに到達できたのは、漆器があったからです」と小山さん。
さて、この会に参加したことがおありの方はおわかりだと思いますが、「食べられない料理の話は、最悪」が小山さんのポリシー。
今回は、青柳で使っている象彦の漆器に、「日本食文化フェスティバル」でインスピレーションを得た青柳の料理を盛り付けます。料理を手がけるのは、虎ノ門青柳の料理長と、小山さんご自身。ある意味、パリより豪華かもしれません。
まずは、ため塗りの朱色と色合わせが美しい出し巻と鯛向附、点描の茶托には赤出汁、朱と緑の鮮やかな彩りを生かした皿には、巻き寿司と鴨ロース、目の前で小山さん自身が揚げた冬姑椎茸と壱岐産の車エビの天ぷらと続きます。
デザートは、パリでは、フランスの家庭でも再現できる和菓子として、虎屋の八つ橋が供されましたが、今回は、青柳では食べることができない、幻の小山さん流・八つ橋が登場しました。
京都でも行われたことがない、空前絶後のこの対談。「日本人の日本知らず」を少しでも改善するため、京都でもイベントを開催することになりました。2010年2月20日に、京都の象彦本店で、小山裕久さんをお迎えします。どうぞご期待ください。
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<ご案内>
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小山裕久氏が理事長を務めるNPO法人日本料理文化交流協会、不肖渡辺が事務方のお手伝いをしておりますが、10月に今年3回目のパリ・セミナーを実施してきました。
今回は第一回日本食文化フェスティバルと銘打って、パリで活躍中の日本料理店5軒を巻き込んでのセミナー、その幅広さと奥深さを実演と試食会でアピールしました。
○和菓子教室 担当店 虎屋
10月20日(第1回)13:30〜15:00 (第2回)16:00〜17:30
家庭で出来る和菓子の作り方&試食
○寿司の巻物講座&試食 担当店 善
10月22日 13:30〜15:00
○弁当講座&試食 担当店 花輪
10月22日 16:00〜17:30
○天ぷら講座&試食 担当店 国虎屋
10月23日 13:30〜15:00
○そば講座&試食 担当店 円
10月23日 16:00〜17:30
○メインイベント 講演&対談
テーマ「漆器と日本料理」
10月24日 15:00〜17:00
何と100名以上のフランス人の方が参加して頂き、熱心な質問が相次ぎ、関心の深さ、レベルの高さを感じました。
たまたま新婚旅行でパリを訪れていた漆器職人の方が、「日本でもこんな会は無い!」「素晴らしい!」と感激されていましたが、そうこんな会は無いのです。
パリのイベントの様子は、このサイトにあります。
http://www.gillie.co.jp/info-8.html
日本料理は世界で唯一、食器を持って食べるマナーで知られていますが、熱い物を熱く、冷たい物を冷たく保つ食器としての漆器は、我々が普段使っているお椀や鉢、皿や箸に多用されています。
熱々の味噌汁を陶器や磁器、はたまた金属器で飲んだら、どうなるかは、日本人の方は十分お分かりだと思いますが、漆器と日本料理、切っても切れないご縁です。
今回パリのプレゼンの為に、小山さんと二人で京都に行き、本当に素晴らしい漆器に青柳の料理を乗せて撮影するという、世紀の現場に立ち会わせて頂きましたが、本当に唸っていました。
それらの写真をパリで順番に見せて行ったのですが、パワーポイントで写真が変わる度に、会場からため息が!そう、日本人の我々が見てもそれはそれは凄いものなのです。
撮影に立ち会った者からすると、漆器というモノ、食材というモノが、一緒になったとたん、ぐぐぐっと存在感を持ちます。
それぞれ影響し合って変化し、魂が宿った感さえありました。だからこそ圧倒的なパワーで、パリの聴衆の心をつかんだのですが、今回は、東京の皆様にそれをお見せする機会です。
勿論日本人向けですから、パリとは少し違う内容になりますし、実際に「象彦の漆器に乗せた青柳の料理」も少し食べて頂きます。きっと漆器をかなり意識して食べる時間になると思いますよ。(食事会ではありませんので、ご注意ください。)
小山裕久氏、西村毅氏が揃っていらっしゃいますので、日本料理、漆器、双方に関してのどんな質問にもお答え出来ます。文化としての日本料理、文化としての漆器、講座でもあります。
「日本人の日本知らず」と言いますが、今まで知らなかったのならば、いま知れば良いのです。そんな機会をこの場でご提供し、皆で共有したいと思います。
これらの知識は決して蘊蓄として自慢するのではなく、教養として身につけ、自分の国の文化、自分の国の食を、次の世代に、そして外国の方に正確にお伝えしたいものです。
マスコミの方、食品業界の方、飲食界の方、食いしん坊の方、漆器に興味がある方、日本文化を知りたいと思われている方、平日昼間の会ですが、奮ってのご参加お待ちしています。
NPO法人日本料理文化交流協会のイベントとの共催です。(実はこの協会の事務局長は渡辺なのです。)今後もこのシリーズは共催とさせて頂きますのでご了解下さい。
キッコーマンさんなど各社の方もご一緒しますし、小山氏・渡辺も所属する日本文化デザインフォーラムの方にもお声掛け、今回は別の感じで新しい出会いがあると思います。ご期待下さい。
検討中ですが、この内容で年明けに京都で実施したいと思っています。パリ、東京、京都、三都で実施「漆器と日本料理」の会です。どうぞよろしくお願いします。
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<参考情報>
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<小山裕久氏プロフィール>
徳島市生まれ。徳島「青柳」の主人。日本料理人。
徳島「青柳」「婆娑羅」、東京・虎ノ門「青柳」の他、お台場「basara」など。
2004年春、フランス共和国農事功労章シュバリエを授与される。
著書に『味の風』(柴田書店)、『小山裕久の日本料理で晩ごはん』
『続小山裕久の日本料理で晩ごはん』(朝日新聞社)などがある。
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<参考サイト>
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●小山裕久オフィシャルサイト
http://www.koyama-hirohisa.co.jp/
●京漆器 象彦
http://www.zohiko.com
●キッコーマン
http://www.kikkoman.co.jp/
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<実施概要>
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●小山裕久の日本料理講座 レクチャー&交流会
今回のテーマ:「漆器と日本料理」
●日時:11月25日(水)13:30〜15:30
●会場:キッコーマン東京本社1階 KCCルーム
港区西新橋2-1-1
(銀座線虎ノ門駅1番出口徒歩4分 都営三田線内幸町A3出口徒歩5分)
http://www.kikkoman.co.jp/company/gaiyou/tokyomap.html
●ゲスト
:小山裕久氏(青柳 主人)
:西村 毅氏(京漆器象彦 副社長)
●会費:ギリークラブ会員 8,000円 ビジター 10,000円
(青柳の軽食付きです。)
●参加人数:申込み先着順 30名限定 (メンバー優先です)
※NPO法人 日本料理文化交流協会との共催です。
そちらのお客様も参加されますので、新しい出会いにご期待下さい。
●応募締め切り:11月20日(金)
(それ以前でも満員の際には締め切ることもあります。)
※満員の際、キャンセル待ちは可能です。
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