<GILLIE>株式会社ギリー
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『5月の広東料理を楽しむ』
〜 赤坂璃宮譚総料理長に聞き、食し、憩う1年 〜


<ご報告>


中国料理の素朴な疑問を聞きながら、毎月学び、食べているシリーズですが、まだまだ何も分かっていないんだな、と思わされて会でした。これで10回目、残すところあと2回、譚さんに言わせると「そろそろネタ切れ」との事ですが、どうしてどうして、これじゃ12回では駄目だなと思いました。以下の小林由佳さんのレポート、お読みください。最後の中国料理の料理名のくだりなど、「へえ〜、そうだったのか!」です。
渡辺幸裕

今回は、食事の前に上海万博帰りの参加者からのリアルレポートがありました。食から入る中国理解の為にも生きたエピソードは貴重です。お陰でこの日の会は大いに会話が盛り上がりました。

赤坂璃宮のショウプレート

上海のお話が終わる頃、毎回着席したテーブルにセッティングされているショウプレートが下げられ始めます。名匠・井上萬二氏による白磁です。大川さんが「赤坂璃宮の名前が入っていなければ、ン十万円はします」というこのお皿に、今回初参加の方が感嘆。コースがスタートする前に、改めて一同鑑賞するひとときがありました。老舗としての風格、これから出てくる料理のレベルの高さを期待させるこのショウプレートは、微塵の隙もない美しさです。そして同じ白磁が続く前菜の取り分け皿にも登場しました。

ひとつの円卓を囲む食事のスタイルは、中国料理の大きな魅力といえます。限られた人数ではありますが、個々が着席し顔を見合わせ、同じものを食べ語り合うひとときは本当に楽しいもの。しかも今回は開催直前にメニューの変更が。「いい素材が入ったから」というのがその理由。確かに最初のメニューから確実にグレードアップしています。前菜を除き、すべて海鮮食材での構成というのも初めてです。

●璃宮焼味盆(レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン)
くらげの冷製、黄人参、キュウリ、桜大根、パプリカ、白菜の甘酢漬け、牛すね肉の冷製、食用ほうずき、伊達鶏の醤油漬け、窯焼きチャーシュー

前菜はすべて大皿からの取り分けスタイル。野菜類は、巻かれた薄切りキュウリの上にサイコロ状の桜大根、細切りの白菜の上にパプリカの甘煮を乗せたりと、彩りよく飾られています。大川さんオススメの「牛すね肉の冷製」は非常にやわらかく、舌で押すだけで肉の繊維がほどけていきます。伊達鶏は醤油で飴色になった極薄の皮とツルツルとした肉の歯触りが美味。“噛み応えが楽しめる柔らかさ”がたまりません。よくテレビ番組では、肉料理を“柔らかい”とか“舌の上で溶ける”などと表現していますが、噛む必要のないほど柔らかい肉など実際は物足りないものです。赤坂璃宮のこの焼き物のように、噛みしめて感じる絶妙な弾力こそ、食いしん坊の意欲を掻き立てるのです。

●海味会排翅(ホイ・メイ・ウイ・パイ・チイ)
ふかひれの姿煮 海鮮あんかけ

あんかけにはニベの浮き袋が入っています。ニベは関東で「イシモチ」とも呼ばれているスズキ科の魚。微かに磯の香りが残る、クニクニとした食感です。そしてフカヒレの下にはモヤシと黄ニラが隠れていました。思えばフカヒレのような高級食材と庶民派代表のモヤシがひと皿にある料理はあまりお目にかかりませんが、それぞれを交互に食べて納得。お馴染みのフカヒレの食感にモヤシのシャクシャクと浮き袋のクニクニが加わって、面白い一皿です。いつもはスープの深い味わいに感嘆するフカヒレ料理ですが、今回は食材ごとの舌触りが印象的な仕上がりでした。

●格蘭醸蟹蓋(ガッ・ラン・ヨン・ハイ・コイ)
タラバ蟹とズワイ蟹のオーブン焼き

立派な青白磁の大皿にズラリと並べられた人数分のズワイ蟹の甲羅。その光景に「大勢で食べるとこういうサプライズがあるからいいよね」というのは、上海から帰国したばかりの方。現地で本場の味を体験しつつも「帰国してすぐ赤坂璃宮の会があるのが楽しみだった」と言います。「蟹のオーブン焼き」は、以前ワタリ蟹を使った一品として登場したことがありますが、今回はズワイ蟹の殻の中にタラバとズワイの身がギッシリ。「塩加減が非常にいい」「白ワインが合いそうだ」と称賛が続く仕上がり、甘いタマネギの余韻に箸が止まらず、皆さんあっという間に食べてしまいました。前回の渡り蟹の時にも「これは中華なんですか?」という質問が出ましたが、老舗広東料理店でこれだけ完成度の高い欧風料理が出れば、やはり今回も聞かずにはいられません。再度この質問をしたところ、「もともとイギリス領でしたから」と大川さん。「だから香港の古いシェフほど、欧風料理の要素を上手に取り入れていますよ」。

●蒜蒸箥士蝦(シュン・チェン・ボ・シ・ハー)
活けオマール海老のニンニク蒸し

鮮度の良さが如実に出る海老料理。このオマール海老は園さんも太鼓判を押す活きの良い素材でした。「今夜は一人で寝ないと隣の方に嫌がられます」と大川さんからご注意が出るほどタップリのニンニク。でも、海老の味がとても濃厚なので“ニンニク味”にはなっていません。半身の上には赤い卵が添えられ、ミソもたっぷり。このミソを身に絡めて食べるとこれがまた…もう口の中じゅう、新鮮な海老の香りが満ち溢れとてもシアワセ。ハサミにも身がみっちり詰まっています。「右側のハサミが当たった人がラッキーです。右側のほうが大きいですから」と大川さん。その明確な理由は分かりませんが、ハサミを持つ甲殻類の中でも、肉食系(主食が貝や魚)はハサミに左右性があり、雑食系はその傾向が少ないと掲載するサイトもありました(信憑性アリ?)。

●五柳八盧魚(ウン・ラウ・パ・ロウ・ユイ)
スズキの五目甘酢あんかけ

主宰の渡辺さんが「この甘酢がメチャクチャに美味い!」と絶賛した魚料理。大きなスズキ一匹が大皿で登場し、鮮やかな赤いあんかけで食欲をそそります。「スズキ自体の鮮度もあるのでしょうが、これは料理人の腕の良さを感じますね」と渡辺さん。高温の油で一気に揚げたスズキの衣に、ピーマンなどの細切り野菜が入ったあんかけがからみます。あんかけの味に消されることなく口の中に広がる白身の風味。骨は改めて素揚げしていただき、バリバリといただきました。これも大勢で食べるからこそできる楽しみ。

●鮑汁炆米粉(バウ・チャ・マン・マイ・ファン)
ビーフンの鮑ソース煮込み

当初は「漬菜と豚肉の蒸しご飯」が予定されていた最後の一品は、極上の鮑の出汁がたっぷり堪能できるビーフンに変更されました。汁気を吸わせて作るビーフンですが、鮑スープではなく「ソース」。金華ハムなどを入れたスープで乾燥鮑を炊き、残ったスープを煮詰めてこのソースを作るため、さまざまな食材の旨みがギュッと濃縮されています。やや太めのビーフンはシコシコした歯ごたえ、これに細切りの野菜が加わります。食感こそシンプルですが、味わい深さは格別。大川さんが「鮑の料理よりこっちのほうが美味しいかもしれません。満腹でも食べられますよ」とイチオシする美味でした。

●美点凍甜品(メイ・テン・トン・ティン・プン)
本日のデザート

食後のお茶はプーアール茶、各自がチョイスするデザートは前回同様でしたが、今回は焼き菓子が出色です。小さな丸いパイ生地の中には、刻んだ生姜の甘酢漬け(ガリ)入りのハスの実餡、そしてその上にピータンの白身がひと片入っています。小豆餡より軽いハスの実餡はガリのアクセントが効き、これにピータンの塩気が絶妙に合うんです。プリッと固めの白身に臭みはなく、一口齧ったパイの中央に黒く輝く鉱石のように登場するピータンは、ちょっとしたサプライズでした。

会の最後には当日ちょっと体調不良の譚シェフに代わって袁シェフが登場して下さいました。袁シェフのお気に入りは、オマール海老の料理でした。そしてビーフン。ビーフンを柔らかくするために、鮑のスープを煮詰めたソースをゆっくり吸わせていくのがコツなのだそうです。

中国語の料理名、読み方のヒント

そして話題は中国料理の料理名の話に。「広東料理は5文字、北京料理は7文字が多い」と大川さんは言います。羅列された料理名は、前半に味付け、中盤に調理法、最後に食材を表しているとか。たとえば、「鮑汁炆米粉」なら、「鮑汁」が味付け、「炆」が調理法、「米粉」が食材……なるほど、これを知ると他の料理名もなんとなく理解できそう……がしかし、ここで大きな問題 (?) が。「実は、料理名の付け方には、料理人ごとの個性が出るんです」と大川さん。「たとえば、“五柳八盧魚”の“五柳”は、“五目”という意味を、細切りの野菜を柳に見立てた袁さん流の命名。だから店のスタッフも、料理人が変わると料理名だけではその内容がわからないことも多いんですよ」。そ、そうでしたか……しかし大きなヒントをいただいたので、次回からは中国語の料理名を“眺める”から“読む”ことが楽しみです。


璃宮焼味盆
レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン
<焼き物前菜盛り合わせ>

璃宮焼味盆
レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン
<焼き物前菜盛り合わせ>

璃宮焼味盆
レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン
<焼き物前菜盛り合わせ>

海味会排翅
ホイ・メイ・ウイ・パイ・チイ
<ふかひれの姿煮 海鮮あんかけ>

格蘭醸蟹蓋
ガッ・ラン・ヨン・ハイ・コイ
<タラバ蟹とズワイ蟹のオーブン焼き>

蒜蒸箥士蝦
シュン・チェン・ボ・シ・ハー
<活けオマール海老のニンニク蒸し>

五柳八盧魚
ウン・ラウ・パ・ロウ・ユイ
<スズキの五目甘酢あんかけ>

鮑汁炆米粉
バウ・チャ・マン・マイ・ファン
<ビーフンの鮑ソース煮込み>
 

<ご案内>

【満員御礼】

過去9回の様子がここにあります。
(写真もあります)

http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2009/0818.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2009/0916.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2009/1014.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2009/1111.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2009/1202.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0113.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0217_01.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0317.shtml
http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0415.shtml

<以後の予定>
5月28日(金)『新店で広東料理、譚彦彬総料理長と楽しむ』
 ※別メールで案内します
6月15日(火)『6月の広東料理を楽しむ』
7月13日(火)『7月の広東料理を楽しむ』
これで1年シリーズ完結です。
以後の広東料理の企画も、考えています。

11月21〜24日「譚さんと行く香港」日程決定です。
 ※これもご案内します。

<参考サイト>

●広東名菜・赤坂璃宮
http://www.rikyu.jp/

●中国料理ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/

●広東料理ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/

<実施概要>

●『5月の広東料理を楽しむ』
〜 赤坂璃宮譚総料理長に聞き、食し、憩う1年 〜

●日時:5月11日(火)19:00〜22:30【満員御礼】
18:45 受付開始
19:00 広東料理の楽しみ方を聞く時間
19:15 食事開始
22:00 譚総料理長に何でも質問する「広東料理交流会」
22:30 終了

○今回のメニュー
・璃宮焼味盆(レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン)
  焼き物前菜の盛り合わせ
・海味会排翅(ホイ・メイ・ウイ・パイ・チイ)
  ふかひれの姿煮 海鮮あんかけ
・格蘭醸蟹蓋(ガッ・ラン・ヨン・ハイ・コイ)
  渡り蟹のオーブン焼き
・喬頭泡活蝦(キュウ・トウ・パウ・ウッ・ハー)
  らっきょと活け海老の炒め
・五柳八盧魚(ウン・ラウ・パ・ロウ・ユイ)
  スズキの五目甘酢あんかけ
・梅菜肉蒸飯(ムイ・チョイ・ヨッ・チェン・ファン)
  漬菜と豚肉の蒸しご飯
・美点凍甜品(メイ・テン・トン・ティン・プン)
  本日のデザート

●会場 広東名菜・赤坂璃宮 銀座店
中央区銀座6-8-7交詢ビル5F 03-3569-2882
http://www.rikyu.jp/ginza.html/

●ゲスト
:譚 彦彬氏(赤坂璃宮 総料理長)
:袁 國星氏(赤坂璃宮銀座店 料理長)

●同席:大川善樹氏(赤坂璃宮 専務取締役)

●会費:ギリークラブ会員 14,000円 ビジター 16,000円
(料理代、飲み物代、セミナー代)
会費内でのお酒でも、十分な量とレベルだと思いますが、
別ワインや中国酒などご希望の方には、別料金でアレンジします。