「超初心者が日本料理を知る」
〜日本料理って何?と聞かれて答えられる講座、2回シリーズ〜
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<ご報告>
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ギリークラブ版日本料理講座、いよいよ始まりました。
以下にある工藤史歩さんのレポートにもありますが、本当になかなか出来そうで出来ない内容を、服部学園の共催で実現でき、西沢先生をはじめとする学校の先生方のご協力で、ますます素晴らしいものになりました。有難い事です。
本来日本人が知っておくべき料理の基本を、こういう形で学び、知り、そして体験出来た事は、企画者の独りよがりではなく、とても意味がある事だと思っています。また一つギリークラブの財産が増えました。まずは第一回目、お読みください。
渡辺幸裕
「日本料理とは何か?」
日本人でありながら答えるのが難しいこの問いに、この夜、ひとつの答えが掲示されました。
西澤辰男先生いわく
日本料理とは「季節や自然を写し取り」、五味・五色・五法の「調和である」 と。
全2回の予定で開催される「超初心者が日本料理を知る」、すごいシリーズが始まってしまいました。「食文化」をフィーチャーすることの多いギリークラブでも、ここまでドラマチックな講座は前代未聞です。
「超初心者」を対象にしていますが、そうはいってもギリークラブのメンバーです。この夜の参加者は、食べることに意欲的で積極的。日ごろから、名だたる名店も含めて会席料理店や割烹料理店で、日本料理をおおいに楽しんでいます。
そんな参加者の皆さんが考える日本料理とは、渡辺さんが書いたように、下記のようなものです。
・日本は四季が明確で、各地の旬の食材を使った献立が豊富
・明治以前は獣を食べなかったので、味つけが淡白
・「出汁(だし)」と「醤油」による味つけが大きな特徴
・盛りつけや器にも季節感や美を感じさせ、見て楽しめる繊細さがある
いずれもその通り、正解なのですが、やや説明的で、ひとことで真髄を突いたとは言い難い。もやもやと何となくイメージしていたものを、前述のようにひとことでズバリと表現され、腑に落ちた気持ちよさといったら・・・・・・!
講義は、日本料理の歴史から始まりました。
日本料理に決まりごとができたのは、室町・安土桃山時代の「本膳料理」に遡ります。公家や大名の冠婚葬祭や出陣といった祝いの席に、箱膳で一の膳、二の膳、三の膳・・・・・・と延々と出されました。当時は、食べきれなくても、料理がどんどん出ることがもてなしだと考えられていたそうです。
この日は実際に箱膳を見ながら、それぞれの器に入っていた代表的な料理を学びます。本膳料理では、飯、汁に加えて、なます、炊き合わせ、和え物、漬け物が出されたそうです。
やがて料理人達は、この古い様式料理から脱却して、庶民の料理をつくり出します。
その流れの中で、千利休をはじめとする茶人たちによって完成され、現在まで500年近く続いているのが「懐石料理」です。
現在の日本料理は、懐石料理をルーツにしています。
懐石料理はお茶をいただくための腹ごしらえで、一汁三菜を基本としていることはご存じだと思います。この時代は、おなかをすかせていらっしゃるお客様に、炊き立てのごはんと熱々の汁を差し上げることが、いちばんのおもてなしでした。
やがて江戸初期から今日にかけて、懐石料理をルーツに、宴会用料理として発達してきたのが会席料理です。
ここで、食に興味のあるなら、誰もが一度はかんじたことのある疑問、すなわち「懐石料理」と「会席料理」とは、どう違うのか、の謎がひとことで明らかになりました。
つまり、懐石料理は「ごはんを食べるための庶民の料理」、会席料理は「お酒を飲むための宴会料理」です。
もう、メンバーのみなさんの目から、ウロコがぼとぼと落ちていくのが、目に見えるようです。これまで日本料理店でなんとなく食べていた料理構成が、論理的に解き明かされ、ぴしゃりと収まる快感といったら・・・・・・!
さらに講義は「本膳料理」「懐石料理」「会席料理」それぞれの献立構成から、日本料理へは欠かせない包丁使いへと進みました。
さて、エキサイティングな講義の興奮も冷めぬまま、もうひとつのお楽しみがこちら。
参加者が「割烹 にしざわ」と勝手に命名するほど、有名割烹料理店をもはるかに凌ぐ、西澤先生の料理が登場です。
「西澤先生が、お店をやってくれればいいのに」というファンも多い西澤先生の料理ですが、残念ながら(?)その予定はないそうなので、西澤先生の料理を食べられるのは、ギリークラブだけなのです。
さらにギリークラブならではの、ほかでは絶対に体験できない企画が仕込まれていました。
「体験、体感」することを何よりも大切にするギリークラブならではの仕掛けといえば、もうおわかりですね。
そう、「食べ比べ」です。
しかも今回は、贅沢なことに、解禁になったばかりの「長良川の天然鮎」と「養殖の鮎」を、同じ塩加減、火加減で、同じ料理人の手によって塩焼きにします。
塩を軽くしてさっと身を引き締め、炭火で、皮目をパリッと香ばしく、身はきゅっと引き締まりながらもジューシーに焼き上げた、焼き立てアツアツの、天然鮎の香り高さといったら・・・・・・!
養殖の鮎も、もちろん身はやわらかいのですが、ぐずぐずとやわらかく、骨から身がはがれにくく、水っぽい感じです。はらわたにも、大きな味わいの差がありました。
鮎の塩焼きを中心に、この夜の献立は下記の通り。
椀 海老真丈 おくら添え
炊き合わせ 夏野菜(茄子、パプリカ、カボチャ、そら豆、茗荷)
焼物 長良川天然鮎塩焼き
止椀 赤だし
めし あさりと新しょうがの炊き込みご飯
甘味 葛桜
西澤先生の料理は、出汁をしっかりひき(昆布が強い関西風)、塩味を押さえた品のよい味つけが特徴。特に、食材それぞれの味を引き出しつつ調和させ、彩りの美しい炊き合わせには、毎回のことながら、感動します。
また、リピーターの参加者によりますと、「割烹にしざわ」の唯一残念なところは、学校なのでお酒が飲めないところ・・・・・・だったのですが、今回は素敵なサプライズが。旭酒造代表取締役社長の桜井博志氏が参加され、銘酒「獺祭」と西澤先生の料理という、二度とないマリアージュを堪能できたのです。
日本料理に少しでも興味のある人なら、絶対に発見することの多かったこのシリーズ。日時限定ゆえやむを得ないのですが、参加できなかった方は、ほんとうに残念なことをしたと思います。
参加者からは、この講義の内容を、持ち歩きやすい手帳サイズの書籍にまとめ、英訳や中国語訳をつけてほしいという声が次々に寄せられました。
日本料理を正しく世界に発信していく、そんな活動にわたしも参加したいと思います。
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<ご案内>
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服部・ギリー塾でお馴染、服部学園の西澤先生は東京吉兆出身です。学校で日本料理を教えていらっしゃいますが、腕の良い料理人なんだと吉兆さんから聞いています。
日本料理を調理師学校の生徒に教えるという事は、料理が出来るだけでなく幅広い知識と教養が必要、生徒から聞かれる事に答えるのですから・・・大変です。
そんな西澤先生に前からやりたいと思っていた事を相談し、かつ服部先生に「ぜひ共催して欲しい」とお願いし実現しました。日本人なら知っておきたい日本料理を学ぶ会です。
「日本料理って何?」と聞かれて答えられますか?
日本は四季が明確で、各地の旬の食材を使った献立が豊富。明治以前は獣を食べなかったので、味つけが淡白。『出汁(だし)』と『醤油』による味つけが大きな特徴。盛りつけや器にも季節感や美を感じさせ、見て楽しめる繊細さがある。
そう、本当に答え方は難しいのですが、この会では一緒に学び、それも食べましょう。
世界では寿司の大ブーム、日本料理店は花盛りです。昨年、一昨年と日本料理啓蒙イベントで、パリに数回行きましたが、この街には本当に日本料理屋さんが多いのです。日本人以外の方が経営、お客も日本人ではない方々です。
我々からすると「え?」と思うような寿司もありますが、それをカップルの方やご家族連れ、仕事仲間のような方が、美味しそうに、楽しそうに食べていらっしゃるのです。
食の国際化とはこういうものだと、目の前に突き付けられましたが、我々のご先祖様がどんなものを食べて来たのか、自国の料理の認識、特徴の理解をして自ら食べ、そして胸を張って説明出来る所まで学びたいと思います。
学園の教科書を特別に購入させて頂き読みましたが、当たり前ですが2回では分からない事が沢山です。でも、まずは今回はこの内容で実施してみます。
自国文化としての日本料理を知りたい方には、大変貴重な情報になると思います。(専門書を読んだら本当に大変です)
料理評論家や料理人になるつもりもないと思いますが、今後他の方に説明するだけでなく、自分が豊かになります。漫然と食べて来たのが、なるほどと分かる事も多いかと思います。
しっかり知って、次の世代に引き継ぎましょう。奮ってのご参加お待ちしています。2回の方が良く分かると思いますが、単発の参加でも結構です。
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<参考サイト>
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●服部学園 服部栄養専門学校
http://www.hattori.ac.jp
●日本料理(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/
●日本かぶれ(渡辺が以前に連載した日経ビジネスアソシエの記事)日本料理編
http://nba.nikkeibp.co.jp/yamatokabure/1st/03.pdf
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<実施概要>
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●「超初心者が日本料理を知る」
〜日本料理って何?と聞かれて答えられる講座、2回シリーズ〜
料理教室ではなく、日本料理の何たるかを学び、美味しいものを食べます。
●共催:服部学園
●日時:
・第一回:6月8日(火) 19:00〜21:00
<講座内容>
日本料理の歴史、流れ、種類
日本料理の食材(1)「野菜類」
<食べるもの>
鮎の塩焼き
野菜の炊き合わせ
を入れた、6月に美味しい日本ならでは料理
・第二回:6月14日(月) 19:00〜21:00
<講義内容>
日本料理の調理法・道具と器
日本料理の食材(2)「魚介類」
<食べるもの>
鱧 (骨切りの実演もお願いしてします)
賀茂茄子など京野菜の料理
を入れた、6月に美味しい日本ならでは料理
●会場 服部栄養専門学校 別館6階試食室
渋谷区千駄ヶ谷5-25-4 TEL 03-3356-7171
http://www.hattori.ac.jp/access/index.html
●講師:西澤辰男先生(服部調理専門学校 調理技術部 日本料理)
●募集:各回20名限定
●会費:各回、正会員8,000円 ビジター 10,000円
●締切:
第一回:6月4日(金)
第二回:6月10日(木)
(それ以前でも満員の際には締め切ることもあります。)
※満員の際、キャンセル待ちは可能です。
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