日本茶を知り、楽しむ4週
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日本茶を知り、楽しむ4週、第二回目は抹茶でした。
抹茶というと茶道、というイメージがあります。勿論茶道は日本文化の様々な要素が入っているので、入ってみると人間修業の場になるのですが、今回はそうではなく、一体抹茶ってどんなもの?そして美味しく楽しむには?という事を学びました。
工藤史歩さんのレポート、お読みください。
「お茶を淹れる」という行為が「クリエイティブなこと」に変わるこのシリーズ。
第一回目の「煎茶」に続き、第二回目のテーマは「抹茶」です。
抹茶といえばお寺などの観光施設や、日本料理店でいただくイメージ。家庭でふだん飲むお茶としては、もっとも縁遠いのではないでしょうか。
今回は、茶葉のランクによる味わいの違いのほか、抹茶ならではの道具「茶せん」(竹でできた泡立て器みたいなアレです)の振り方による味わいの違いを飲み比べて、「抹茶」という素材のおもしろさを体験します。
その前に、まずは前回の復習から。
そもそも「日本茶」とは、何でしょうか。
日本茶とは、お茶の木から摘んだ若芽をすぐ加熱して、緑のまま発酵させないものをいいます。途中まで発酵させたものは(半発酵)ウーロン茶、完全発酵させたものが紅茶で、この3つのお茶は同じツバキ科の「茶の木」です。
日本茶は「抹茶」「玉露」「煎茶」「番茶」の4つに分けられ、この4つは大きく「抹茶」と「玉露」、「煎茶」と「番茶」の2チームに分かれます。
違いは、茶葉の育て方と味わいの違いです。
まずは育て方。
前者(抹茶・玉露)は、4月中旬ごろに新芽が芽吹き始めたら、徐々に覆いをかけて日光を遮光してしまう「覆下園(おおいしたえん)」で育てられ、後者(煎茶・番茶)は太陽の光をたっぷり浴びられる露天園で育ちます。
続いて味わい。
前者は甘味と旨味が強くてコクがあり、青い香りが馥郁と立ち上がります。
後者は、すっきりと爽やかな香りで、旨味と渋みのバランスがよく、さっぱりした後口です。
なかでも煎茶は、4月中旬ごろの新芽から約1か月ほどの若芽で、甘味と旨味がぐっとつまっています。一方番茶は、煎茶より少し大きく育った葉っぱで、甘味が拡散して渋味へと変わっています
これは、お茶の木に含まれる甘味のもととなる成分テアニンが、太陽の光を浴びると渋みを感じさせるカテキンへと変質するという特徴を利用したものです。
摘んだお茶は、20時間以内に加熱処理されます。これはお茶の緑をそのまま留めるためで、摘んだ茶葉をそのままにしておくと、黄ばんでしまうそうです。
加熱処理(蒸す)をすぐにするのが日本茶、途中まで加熱してから発酵させるのがウーロン茶、加熱せず発酵させるのが紅茶で、日本茶は発酵を止めるので、ビタミンCが損なわれず、他のお茶に比べて多く留めています。
蒸した茶葉は、熱を逃がして冷ましてから、乾かします。パリパリに乾いた茶葉から葉脈をとったもの(てん茶というそうです)を石臼で粉状に挽いたものが抹茶です。
熱を逃がして冷ましてから、徐々によりをかけて、針のようにピンと張るまでよりをかけたものが玉露です。
ちなみに、茶の木の働き盛りは10歳から25歳。
茶屋ごとによる味づくりは、茶葉の具合を見極める仕入れ担当の五感と、合組み(ごうぐみ)という茶葉を組み合わせて味づくりをする担当の五感にかかっています。
茶の木は生き物ですから、天候や気候により、年ごとに微妙な味わいの差が出ます。
素材本来の持ち味ですから、味わいの違いも楽しいのですが、さまざまな茶葉を合わせて、後は淹れ方で味を調えられる範囲に、味を組み立てていくのが、お茶屋の腕の見せどころ。そこにお茶屋それぞれの個性が発揮されます。
お茶の葉の見極めは熟練の技を要するため、知識がないとだまされてしまうこともあり、昔は「狐草(きつねぐさ)」なんて言っていたこともあるそうです。
それではさっそく抹茶から試飲です。今回もさまざまなジャンルから7種類のお茶を味わいます。
試飲一番目は、京都限定の抹茶「京極の昔」を氷水でたてたもの。
こっくりとした甘さと旨味を味わいます。
試飲二番目は、玉露「甘露」を氷水で抽出したもの。
240ccのきゅうすに茶葉を15gと氷水を入れ、1時間おきました。むっくりとした青い香りは「覆香(おおいか)」というそうです。
試飲三番目は、煎茶の新茶。青々とした若々しい香りはアオバアルコールという成分によるもので、これは茶葉を摘んだときに最大限に含まれています。
その香りをできるだけ失わないよう、一保堂ではスピードを心がけ、摘んでから1週間で出荷しているそうです。
通年扱っている煎茶は、円熟した味わいが特徴ですが、5月中旬から6月中旬(梅雨明け)ごろまでの新茶は、また特別な味わい。香りを立たせるために熱湯でいれ、さっぱり爽快な渋味を味わいます。
試飲四番目は、番茶の「若柳」。食後にぴったりな、さっぱりした味わいです。
試飲五番目と試飲六番目は、いよいよ抹茶の「関の白(かんのしろ)」です。
同じ抹茶を、表千家では「丹頂の昔(たんちょうのむかし)」、裏千家では「関の白(かんのしろ)」と呼びます。
抹茶を茶杓(耳かきの大きいのといわれることもあるアレ)に山盛り一杯半(約1.5g)。抹茶は断面図がこんぺいとうのようなトゲトゲになっていて静電気がおきやすく、ダマになりやすいため、一椀ごとに茶こしで軽くこします。
適温(80℃)のお湯を適量(3口半)入れて、さあ、ここから。
表千家流の泡を立てないお茶は、ひらがなの「い」の字を15回くらい書くように、静かに茶せんを動かします。
これはお茶の甘みとうまみのみを引き出して、満喫するたて方。苦味は茶葉の中に残します。
一方、裏千家流は、手首のスナップをきかせて、茶せんを反動を利用して手前と向こうに動かして泡を立てます。これはお茶を2層にすることで、下の層に甘みとうまみ、泡に渋味を出すたて方。15秒くらいですばやくたてます。
わたしは一応、裏千家の社中なのですが、お茶のたて方でここまで味わいが違うなんて、まったく知りませんでした。甘さやコク、口当たりが全然違うんです。
みなさんにも、ぜひご自宅で試していただきたいです。むずかしい作法など覚えなくても、「い」を書くか、手首のスナップをきかせるか、それだけで同じ抹茶が、まったく別の味わいになるんですから!
ここでいつものように、京都らしいお菓子が登場します。今回は有名な「甘泉堂」の水ようかんでした。
試飲の七番目には、自宅で気軽に使える実用例として、低いクラスの抹茶「結の白(むすびのしろ)」がデミタスカップに入って供されました。添えられたお菓子は京都「エキュバンス」のチョコレート(黒豆のホワイトチョコと、山椒のチョコレート)。
抹茶茶わんがなければ小鉢などで代用してもいいし、茶杓がなくてもティースプーンで代用できます。茶せんさえあれば、自宅でだれでも簡単に抹茶を味わえるんですね。デミタスカップの「和のエスプレッソ」は、簡単なのにおしゃれな、上級のおもてなしに見えます。参加者のみなさんからも大好評でした。
最後に保管について。
抹茶に限らず、お茶を保管するときに気をつけるべきポイントは「光」「酸素」「湿気」「匂い」の4つ。遮光性のある缶に入れ、内袋から空気をしっかり抜いて口を閉じ、冷蔵庫に入れず、なるべく涼しいところに置き、早いうちに飲みきります。
ちなみに抹茶の場合は、開封後1週間くらいから風味が落ち始めるので、少量ずつ購入するのがおすすめ。開封した時には青みがかった緑色をしていた抹茶が、退色してきたら、ミルクで割った抹茶オレにしたり、濃いめにたててアイスクリームに添えたりして、早く使い切りましょう。
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<ご案内>
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「お茶の間」という言葉は死語に近くなっていないでしょうか?以前はどの家にお茶の間があり、そこでの家族団欒がありました。懐かしい光景ですが、住宅の洋風化は容赦なく押し寄せ、ダイニングルームとなり和食から洋食に、日本茶から紅茶やコーヒーに・・・という方も増えています。
ですが、食後は日本茶という方は多いはず。ペットボトルの日本茶は厳密には「お茶飲料」、日本茶風味のものが手軽に味わえるという点では便利ですが、お茶を自分で美味しく淹れる機会を減らしてしまった、その原因の一つでもあるかもしれません。
今月観た文楽の作品にこんな場面がありました。「こんな出涸らしの茶が飲めるか!」と怒って茶碗からお茶を捨て、茶屋の親父さんに淹れ直させた嫌な奴が出てきました。
まずいお茶ほど気分を悪くさせるものはありませんが、逆を言えば美味しいお茶を飲むと本当に幸せになります。「ああ日本人に生まれて良かったぁ」と思います。
以前ギリークラブで京都小旅行に行った時に一保堂さんにお邪魔し、短時間ではありましたが日本茶セミナーをして頂き感銘を受けました。それでご縁が出来、それからこんな事が一緒に出来ないかと、相談をしながら準備してきましたが、実現に至りました。
一保堂さんに4週連続で京都から東京に出張して頂き、日本茶セミナーを実施して頂けます。
以下に概要を記しますが、毎回煎茶、抹茶、番茶、玉露をテーマに基本を学び、茶葉の選び方、淹れ方、楽しみ方、保存法などをお聞きし、勿論毎回テーマのお茶を菓子と一緒に頂戴してなごみます。、
日本人ならこれは知っておきたいものです。美味しいお茶を淹れたら、お客様に本当に喜ばれます、というより仕事が上手くいくかもしれません。
淹れる方も、飲む方も、何が美味しい日本茶なのかを知っておいた方が、幸せで潤いのある人生がおくれます。そんな事が学べる貴重なチャンスです。
平日昼間ではありますが、どうぞ調整してお出かけください。4回シリーズですが、1回だけでも、2回だけでも全く問題ありません。ご都合が付く日にお出で下さい。
「お茶を濁して」自分の気持ちをごまかさず、自国の文化として大切な日本茶を学びませんか?奮ってのご参加お待ちしています。
(一保堂さんからのメッセージ)
一保堂茶舗は京都 寺町二条に本店を構える日本茶専門店です。
一保堂では、抹茶、玉露、煎茶、番茶類の日本茶で、穏やかな味と香りが特長の「京銘茶」を中心に取り扱っております。
またお茶をお売りするだけでなく、茶葉の魅力をお伝えすることも大切な役目の一つと認識し、「お茶の淹れ方教室」を開催しています。
今回は抹茶、玉露、煎茶、番茶類と茶種ごとに、日本茶の畑から製造工程、大切な淹れ方から日常生活の楽しみ方まで試飲も交えてお伝えする教室を開催します。まずはご自身で体験しながら、日本茶を知って、味わって、楽しんでください。
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<参考>
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渡辺が2005年に日経ビジネスアソシエに書いた原稿です。
http://nba.nikkeibp.co.jp/yamatokabure/1st/15.pdf
当時、若手ビジネスパーソン向けに日本文化指南を連載しており、
「真の国際化とは自分の国を知ること」がコンセプトの連載でした。
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<参考サイト>
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●一保堂茶舗
http://www.ippodo-tea.co.jp/
●日本茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/
●煎茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/
●抹茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/
●番茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/
●玉露 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/
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<実施概要>
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●日本茶を知り、楽しむ4週
仕事中、食事中、日々何気なく飲んでいる日本茶。抹茶・玉露・煎茶・番茶と聞いたことはあるけれど一体何が違うの?意外に知らないことがたくさんあると思います。そんな日本茶をご紹介するセミナーを開催します。まずは知って、味わって、楽しんでみませんか?興味のある茶種に参加するもよし、全てのお茶と仲良くなるもよし。お茶を一服どうぞ。
●日時:6月2日・9日・16日・23日(毎週水曜日)15:30〜17:00
●会場:丸の内カフェ2F
千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1F TEL : 03-3212-5025
http://www.marunouchicafe.com/access/index.html
●募集: 各回10名
●会費:このページの最後の各回の詳細案内をご参照下さい。
●締切:5月24日(月)
(それ以前でも満員の際には締め切ることもあります。)
※満員の際、キャンセル待ちは可能です。
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<第 2 回>
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●日本茶を知り、楽しむ (2) 抹茶を楽しむ
●日時 6月9日(水) 15:30〜17:00
●会費 正会員 4,000円 ビジター 6,000円
<テーマ >
口の中に広がるふくよかな甘みと香りが特長の抹茶。茶道のイメージが強く、とっつきにくいお茶だと思われがちですが、実は意外とカンタンに楽しめます。普段の暮らしの中でもっと気軽に楽しむ方法をご紹介します。
●ウェルカムドリンクとご挨拶
・抹茶:京極の昔を氷水点てでご用意します。
●日本茶ってどう違うの?
・畑の違いから製造工程など、日本茶って何なのかをまずお伝えしていきます。
・抹茶・玉露・煎茶・番茶類と日本茶それぞれ味わいの違いを試飲を交えてお伝えします。
・抹茶、玉露、番茶を試飲いただきます。
●抹茶を点てるポイント
・抹茶を点てるために必要な道具の説明と、点て方も2通りご説明します。
●抹茶を点てる体験 季節のお菓子とともに
・抹茶をご自身で点てていただきます。2通りお好きな点て方でお楽しみください。
・抹茶に合った季節のお菓子をご用意します。どうぞお楽しみに。
●抹茶の選び方と味わい違いを体験
・一保堂は抹茶の品揃えが豊富です。お客様のお好みに合わせて選んでいただけるよう味わいの違いをご紹介します。また用途に応じた抹茶のお買い物方法をご紹介します。
・味わい違いの抹茶を試飲いただきます。
●抹茶でおもてなしのご紹介 干菓子とともに
・抹茶はカンタンに、しかもおもてなしにもお使いいただけます。そんなおもてなしアイデアを干菓子を添えてご紹介します。
・おもてなしに適した抹茶を試飲していただきます。
●抹茶の保存方法
・せっかく買い求めた抹茶。美味しく飲んでいただくためには点て方と同じく大切なのが保存方法です。
●質疑応答
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