『6月の広東料理を楽しむ』
〜 赤坂璃宮譚総料理長に聞き、食し、憩う1年 〜
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<ご報告>
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考えてみれば(考えなくても)、広東料理の会は11回目です。あと1回を残すのみとなり、よくここまで来たね、と参加者の輪が広がります。毎回毎回広東料理を食べ、語り、変な質問をして、しっかりお答え頂く、こんなに我儘で贅沢な会はありません。
ご参加者もお互い気心が知れた関係となり(まあ戦友みたいなものです)、最終回が終わったら泣いてしまうかも(そんな事ないですか)、、、食を通じて中国を知る1年、そろそろ終盤です。今回も小林由佳さんのレポートをお読みください。
今回の目玉は冬瓜。中国語では「トングワ」と読みます。字面は冬の野菜のようですが、収穫期はちょうど今の時期から。収穫した実を冷暗所に置いておけば冬まで保存できることから、この名がついたといいます。漢方では、体を冷やし熱を冷ます効果があるとされる野菜です。蒸し暑くなるこれからの季節にピッタリですね。
●璃宮焼味盆(レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン)
くらげの冷製、黄人参、キュウリ、桜大根、パプリカ、白菜の甘酢漬け、牛すね肉の冷製、食用ほうずき、伊達鶏の醤油漬け、窯焼きチャーシュー
焼き物前菜盛り合わせ
今までこの皿を担当していた焼き物師は、香港に修行へ旅立ったそうです。中国人が日本で和食の修業をすることがあっても、日本人が中国本土に料理の修業へ向かうことは、極めて珍しいことなのだそうです。「本土に行っても、外国人の料理人を受け入れる土壌がないのが現実です。だからそれが実現できたことは、非常に喜ばしいですね」と大川さん。新たに当店の焼き物師となったのは平林さん。いつもこの会のテーブルサービスを担当して下さる橋本さんが「今までの焼き物師のなかでも、いちばんジューシーな料理を作る」と絶賛します。コリコリと固めでしっかりと味付けされたクラゲ、カムチンカイはレバーのコクと甘いタレのコンビが際立ちます。甘酢漬けのパプリカ、ハクサイ、紅芯大根は甘酢が強く利いていますが、汗をかきながらやって、来て最初に口にするには絶妙なインパクト。そして橋本さんのコメントを如実に実感できたのは、「皮付き豚バラ肉のクリスピー焼き」でした。表面がカリカリの皮付き豚バラ肉は、肉の繊維に逆らって噛んでもサックリとほぐれ、ジューシーな脂分が口の中でとろけます。
●椒塩目光魚(チュウ・イン・モッ・コン・ユイ)
目光のスパイス揚げ
日本の目光(丸青目鱛 マルアオメエソ)と東シナ海のそれは、似ているようでちょっと違うとか。ハゼくらいのサイズ、頭をとった状態で大皿に積み上げた薪のように登場しました。各自サーブされた皿には揚げたタケノコとベビーコーン、カットしたライムも添えられています。各自2匹ずつなので、1匹はそのまま、2匹目はライムをかけていただきます。小さい1匹ですが、適度に脂がのった柔らかい白身に、「実は目光のクセが苦手で…」と言っていた参加者の一人も「これは独特なクセも感じなくて美味しい」とペロリ。たっぷりの揚げニンニク、ガーリックチップ、塩、赤山椒、ネギからなる味付けが、この「スパイス揚げ」たるゆえんですが、これだけスパイシーでも目光自身の味はしっかり堪能できました。
●干貝冬茸羹(コン・プイ・トン・ヨン・カン)
干し貝柱と冬瓜のとろみスープ
広東料理で冬瓜のスープといえば、くりぬいた冬瓜を器にした「冬瓜蛛iトングワチョン)」が有名ですが、今回は譚料理長オススメの一品。「赤坂璃宮のスープに裏切られたことはない」と主宰の渡辺さんも言うとおり、期待大です。金華ハムを散らしたスープには、茹でて包丁の裏でたたいた冬瓜、そして干し貝柱が入っています。一口すすれば、ジリリと舌にスープの味が浸みこんできます。フワリと煮えた冬瓜、出汁が出てもなお味の強さを感じる干し貝柱。「これだけの味を、スープというシンプルな一品で味わってしまうと、他が食べられなくなる」という人も。「手前ミソですが、ホント、スープでこれだけの味を出せる店は、なかなかないと思います」という大川さんが、このスープをはじめ、赤坂璃宮の味の要となる上湯(ショントン)について、お話ししてくださいました。
赤坂璃宮の味を支える「上湯スープ」とは。
「金華ハムの出汁、金華ハムを作る時に出る塩、鶏肉、豚の赤身肉……ベースとなる上湯スープに入っている素材は、このくらいなんです。よく、ネギのような香味野菜を入れて作る店もありますが、赤坂璃宮の上湯には入っていません。だから、入っている素材がすごい力を持っている、ということなんです。厨房では、寸胴鍋に入ったこのスープを、ポコポコとゆるく沸騰している状態でずっと煮込み続けています。この鍋の管理は袁料理長だけ。決して人に任さず、ずっと注意深く見守っています。スープ料理にはこの上湯を使い、フカヒレなどには、この上湯にさらに金華ハムを入れて“二度仕込み”をして使います。袁料理長は“日本に輸入できない、生のカビがついた本土の金華ハムを使えたらもっと美味しくなる”と言ってますよ」。
上湯とは、いわゆる「中華スープ」のこと。赤坂璃宮のスープ料理はどれをいただいても深い感銘を受けます。過去の会でも、スープ料理の完成度の高さに「もうここでコースが終わってもいい」という声を何度となく聞いています。120%引き出された食材の力、仕上がりまでの料理人の集中力の結晶が、この上湯の奥深さなんでしょうか……と、大川さんからのレクチャーが終わる頃、特別に、“二度仕込み”の上湯スープが一口ずつ試飲用に配られました。……いやもう、本当にコレは幸運としか言いようがありません。「体の中からグワッと持ちあがってくるような味」「これを味わうために今まで参加してきたと思った」「目をつむって飲むと、フカヒレの姿煮を食べているよう」……などなど。この味でその店の料理のクオリティが決まる、まさに料理の心臓部を覗かせていただいた気分です。
●時疏象抜蚌(シ・ソ・ジョン・バッ・ポン)
季節野菜とミル貝の炒め
程よい食感で、やさしい甘さとコクが口いっぱいに広がるミル貝、たっぷりのネギと黄ニラ、アスパラガスを塩味で仕上げた炒め物。熱した鍋肌でエシャロットとニンニクの香りを出し、サッと炒めただけの一品です。「野菜と貝だけで全体的に白っぽく、見た目はシンプルな料理ですが、塩味の炒め物でこれだけ奥深い味を出している店もなかなかないんですよ」と大川さん。これも手前ミソですが…と照れつつ、赤坂璃宮の炒め物について熱く語って下さいました。「ランチタイムのメニューにある野菜炒めは、このミル貝が入っていないだけで作り方は同じ。1800円というランチセットの価格は決してリーズナブルとはいえませんが、それでもリピーターの方が多くいらっしゃるんです。つまり、それだけ味の違いを分かってくださっているのかな、と思っています」。ランチメニューにある「塩やきそば」にもファンが多く、美食を重ねた某大手企業の社長さんからも「赤坂璃宮の塩やきそばが世界一」というお墨付きをもらっているのだそうです。素材の良さはもちろんですが、こういうシンプルな、どこにでもあるメニューでしっかり勝負できるお店は、やはり貴重な存在です。
●豆支冬瓜鶏(タウ・シ・トン・クワ・カイ)
冬瓜と伊達鶏の黒味噌煮込み
サイコロ状にカットされた冬瓜は、黒味噌と伊達鶏のうま味をすべて吸収しているような味。参加者一同、冬瓜の底力に思わずうなります。一緒に煮込まれたシイタケや木クラゲが食感を豊かにし、スライスしたショウガがキリっと全体を引き締めています。冬瓜から肉のうま味を存分に感じるのに、大ぶりにカットされた伊達鶏にはしっかり味が残っており、赤ワイン…いや白いご飯が欲しくなる味。じんわりと残る後口に家庭料理のような温かみを感じますが、「絶対真似出来ないんだろうなぁ」と痛感させられる、老舗ならではのメリハリを感じさせる煮込みでした。
赤坂璃宮が誇るお茶ソムリエが、秘蔵の茶葉を披露
ここで、本日体調不良を押して出席したひとりに、当店のお茶ソムリエの橋本さんから「金萓茶(キンセンチャ)」がサービスされました。台湾茶であるこのお茶は、香りが高く苦みの少ない味が特徴。口に含むと丸い口当たりで、バニラのような香りが広がります。飲んだ後はのどに甘いバニラの香りが残り、穏やかな気分になります。「この優しい余韻は、中国本土のお茶にはないんです」と橋本さん。少ない茶葉で8煎まで入れられると聞き、即全員が試飲させていただきました。
●支油皇蝦碌(シ・ヤウ・ウォン・ハー・ロウ)
活け車海老の醤油風味煎り焼き
テーブルにサーブされる数分前まで水槽で泳いでいたという、大きな車海老。海老好きの大川さんが「海老は頭からムシャムシャ食べられないといけません。頭をとった尻尾だけの海老なんてありえませんから(笑)」というとおり、この車海老も身から離した大きな頭がそのままサーブされます。醤油で飴色になった頭の殻は齧るとバリっと香ばしく、次の瞬間ジュッとミソが出てきます。身の甘さも格別ですが、もうこの頭だけでも充分に満足できる一品。すごい。圧倒される食べ応え。舌に残る海老の甘みと香りが静かに消えていくところまで、余すことなく堪能できます。
●海鮮XO炒飯(ホイ・シン・エックス・オー・チャウ・ハン)
XO醤入り海鮮チャーハン
大皿に山盛りで登場した炒飯は、ご飯の一粒一粒がツヤッツヤに輝いています。パラパラ感は一目瞭然。山盛りの炒飯の姿に“美しさ”を感じたのは初めてです。キリリと立ち上がるようなご飯粒を口に運べば、水分を感じさせないサラサラ感。テーブルに登場した様子に感激し、食べてまた感激した一同、「これはさすがに家庭ではできませんねえ」と頷き合いますが、「いえ、譚料理長は、IHクッキングヒーターの実演でこれを作っています」と大川さん。え! 強大な加熱でガンガン中華鍋を振らなくても、こんな仕上がりに?? 「iHでは鍋が振れませんから、鍋の中でご飯を振っているんです。鉄板焼きでご飯を炒めるような感覚ですね。これが出来れば、家庭のIHでも、2人分くらいは一度に作れますよ」。…ただ、この炒飯に使われているXO醤は油分が多いので、パラパラに仕上げることが非常に難しいそうです。個性の強いXO醤でまとめられていても、ご飯粒と同じ大きさにカットされたインゲン、エビ、カニひとつひとつがしっかり味わえます。一皿に味と食感すべてが完璧なバランスで集約されています。“こんな炒飯を食べたら、他で食べられなくなってしまう”と思わずにはいられません。テーブル全員、各自の皿がキレイになるまで無言。平らげたところで「……最後の最後に、スゴイのが出た」とため息まじりに言う人、「今日はこの炒飯の勝ちですね」と断言する人、「ここまで食べてきた料理を忘れてしまうほどだ」…などなど。同じ店でも、作る料理人によって炒飯には個性が如実にでるそうです。袁料理長のそれは、ご飯が濃い茶色に仕上がるのが特徴だとか。この素晴らしさに、主催者の渡辺さんからは「今度、いろいろな店の炒飯を食べ歩く“ツール・ド・炒飯”を計画しましょうか」とうアイデアが出ました(もちろん満場一致で大賛成)。
●美点凍甜品(メイ・テン・トン・ティン・プン)
本日の点心とお菓子
炒飯の底なしの美味しさに度肝を抜かれた皆さん、「なんだか今日は気づけば満腹になっていたというカンジ」と言いつつも、デザートのチョイスに目を光らせます。不動の人気、赤坂璃宮の杏仁豆腐は「バケツ一杯食べたい」という人もいるほどの美味。広東料理のデザートは本来温かいものが主流ですが、「日本のホテルで、中国料理人と西洋料理人のコミュニケーションから生まれた」というこの冷製のスイーツは、今では香港でも定番になりつつあります。日本の中国料理店で出回り始めた当初は、寒天を使った杏仁豆腐に、缶詰のフルーツを散らしたものがほとんどでしたが、杏仁豆腐に生クリームでコクと滑らかな口当たりを加え、新鮮なフルーツを添え高級スイーツに昇華させたのは、他ならぬ譚料理長。コースの完成度の高さを損なわず、むしろこれを食べなきゃ終れないとすら感じてしまう味に、“バケツ一杯”という気持ちも分かります。
デザートをいただいているところで、譚料理長が登場されました。今回の冬瓜の料理についてのお話しを伺います。「冬瓜をはじめ、キュウリやスイカなどウリ科の野菜は、夏場の体を冷やすものとしてよく食べられます。でも香港の冬瓜料理には、今日の柔らかい仕上がりと違って、もっとサクサクとした歯応えがあるんです。柔らかい仕上がりは日本人好みです。だから今日のコースにあった“冬瓜と伊達鶏の黒味噌煮込み”は、作るのが難しかったと袁料理長が言っていました。本来、この料理は肉と冬瓜を同時に入れて冬瓜のサクサク感が残った状態で仕上げるのですが、日本人好みに仕上げるには、それぞれを鍋に入れるタイミングが違いますからね」。……なるほど、そんな工夫をしていただいていたとは。しかし、それならば“サクサクの冬瓜料理”も是非……(←食べ過ぎ)。
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璃宮焼味盆 レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン
<焼き物前菜盛り合わせ> |
椒塩目光魚 チュウ・イン・モッ・コン・ユイ
<目光のスパイス揚げ> |
干貝冬茸羹 コン・プイ・トン・ヨン・カン
<干し貝柱と冬瓜のとろみスープ> |
時疏象抜蚌 シ・ソ・ジョン・バッ・ポン
<季節野菜とミル貝の炒め> |
豆支冬瓜鶏 タウ・シ・トン・クワ・カイ
<冬瓜と伊達鶏の黒味噌煮込み> |
支油皇蝦碌 シ・ヤウ・ウォン・ハー・ロウ
<活け車海老の醤油風味煎り焼き> |
海鮮XO炒飯 ホイ・シン・エックス・オー・チャウ・ハン
<XO醤入り海鮮チャーハン> |
美点凍甜品 メイ・テン・トン・ティン・プン
<本日の点心とお菓子> |
美点凍甜品 メイ・テン・トン・ティン・プン
<本日の点心とお菓子> |
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<ご案内>
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◆今回のメニュー
璃宮焼味盆 レイ・ゴン・シュウ・メイ・ピン
焼き物前菜の盛り合わせ
椒塩目光魚 チュウ・イン・モッ・コン・ユイ
目光のスパイス揚げ
干貝冬茸羹 コン・プイ・トン・ヨン・カン
干し貝柱と冬瓜のとろみスープ
時疏象抜蚌 シ・ソ・ジョン・バッ・ポン
ミル貝とイカの炒め
豆支冬瓜鶏 タウ・シ・トン・クワ・カイ
冬瓜と鶏肉の黒豆味噌煮込み
支油皇蝦碌 シ・ヤウ・ウォン・ハー・ロウ
天然海老の醤油煎り焼き
海鮮Xo炒飯 ホイ・シン・エックス・オー・チャウ・ハン
海鮮入りXO醤チャーハン
美点凍甜品 メイ・テン・トン・ティン・プン
本日のデザート
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<参考サイト>
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●広東名菜・赤坂璃宮
http://www.rikyu.jp/
●中国料理ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/
●広東料理ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/
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<実施概要>
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●『6月の広東料理を楽しむ』
〜 赤坂璃宮譚総料理長に聞き、食し、憩う1年 〜
●日時:6月15日(火)19:00〜22:30
18:45 受付開始
19:00 広東料理の楽しみ方を聞く時間
19:15 食事開始
22:00 譚総料理長に何でも質問する「広東料理交流会」
22:30 終了
●会場 広東名菜・赤坂璃宮 銀座店
中央区銀座6-8-7交詢ビル5F 03-3569-2882
http://www.rikyu.jp/ginza.html
●ゲスト
:譚 彦彬氏(赤坂璃宮 総料理長)
:袁 國星氏(赤坂璃宮銀座店 料理長)
●同席:大川善樹氏(赤坂璃宮 専務取締役)
●会費:ギリークラブ会員 14,000円 ビジター 16,000円
(料理代、飲み物代、セミナー代)
会費内でのお酒でも、十分な量とレベルだと思いますが、
別ワインや中国酒などご希望の方には、別料金でアレンジします。
●参加人数:先着順 10名限定
●締め切り:5月31日(それ以前でも満員の際には締め切ることもあります。)
●満員の際にはキャンセル待ちができます。
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