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日本茶を知り、楽しむ4週

<ご報告>


本シリーズ最終回です。4週に渡って京都から来て頂き、チームで対応して頂いた一保堂茶舗の皆さま、本当に有難うございました。感謝感激です。丸の内で日本茶の企画をしませんか?例えば4週連続など、と勝手な要望にお応え頂きプロの仕事をして頂きました。声を大にして言いたいと思います。この4週間で多くの方が日本茶の美味しさ、そして可能性を感じています。必ずや新しい動きに繋げていきたいと思っています。

最終回も工藤史歩さんのレポートお読みください。


「お茶を淹れることは、クリエイティブなことだ!」を合い言葉に始まったこのシリーズ。今回はさらに「お茶を淹れるのは雑用ではなく、特権だ!」にまで進みました。その理由は・・・。

さて、ギリークラブ×一保堂茶舗の「日本茶を知り、楽しむ4週 」。4週間にわたった講座も、今日がいよいよ最終回です。「来週も来てしまいそう」と、一保堂のみなさん、参加者ともに開会前から別れを惜しみました。

最終回となる今回、第四回の目テーマは「玉露」です。
初っぱなから申し上げるのもナンですが、すごい体験でした。お茶の概念が変わります。この「玉露」を体験できた人とできない人では、これからのお茶に対する態度まで変わりそうです。お茶の底知れない深い味わいに、ほとんど負けそうでした。

その前に、いつものように復習です。
「日本茶」とは、何でしょうか。

日本茶とは、お茶の木から摘んだ若芽をすぐ加熱して、緑のまま発酵させないものをいいます。
途中まで発酵させたものは(半発酵)ウーロン茶、完全発酵させたものが紅茶で、この3つのお茶は同じ椿科の植物です。

日本茶は「抹茶」「玉露」「煎茶」「番茶」の4つに分けられ、この4つは大きく「抹茶」と「玉露」、「煎茶」と「番茶」の2チームに分かれます。

違いは、茶葉の育て方と味わいの違いです。

まずは育て方。

前者(抹茶・玉露)は、4月中旬ごろに新芽が芽吹き始めたら、徐々に覆いをかけて日光を遮光してしまう「覆下園(おおいしたえん)」で育てられ、後者(煎茶・番茶)は太陽の光をたっぷり浴びられる露天園で育ちます。

続いて味わい。

前者は甘味と旨味が強くてコクがあり、青い香りが馥郁と立ち上がります。
後者は、すっきりと爽やかな香りで、旨味と渋みのバランスがよく、すっきりとした後口です。なかでも煎茶は、4月中旬ごろの新芽から約1か月ほどの若芽で、甘味と旨味がぐっとつまっています。一方番茶は、煎茶より少し大きく育った葉っぱで、甘味が拡散して渋味へと変わっています。
これは、お茶の木に含まれる甘味のもととなる成分テアニンが、太陽の光を浴びると渋みを感じさせるカテキンへと変質するという特徴によるものです。

摘んだお茶は、20時間以内に加熱処理されます。これはお茶の緑をそのまま留めるためで、摘んだ茶葉をそのままにしておくと、黄ばんでしまうそうです。
加熱処理(蒸す)をすぐにするのが日本茶、途中まで加熱するのがウーロン茶、加熱せず発酵させるのが紅茶で、日本茶は発酵を止めるので、ビタミンCが損なわず多く留めているといわれているようです。

ちなみに、茶の木の働き盛りは10歳から25歳。
茶屋ごとによる味づくりは、茶葉の具合を見極める仕入れ担当の五感と、合組み(ごうぐみ)という茶葉を組み合わせて味づくりをする担当の五感にかかっています。
茶の木は生き物ですから、天候や気候により、年ごとに微妙な味わいの差が出ます。
素材本来の持ち味ですから、味わいの違いも楽しいのですが、さまざまな茶葉を合わせて、後は淹れ方で味を調えられる範囲に、味を組み立てていくのが、お茶屋の腕の見せどころ。そこにお茶屋それぞれの個性が発揮されます。

お茶の葉の見極めは熟練の技を要するため、知識がないとだまされてしまうこともあり、昔は「狐草(きつねぐさ)」なんて言っていたこともあるそうです。

それでは、いよいよ玉露です。

玉露とは、宇治の京都茶市場の定義では
「遮光率95%以上」「棚がけをする」「被覆期間は20日以上」という3つのルールがあり、これにのっとったものだけが「玉露」と呼ばれます。

日本国中でお茶は年間約10万トン生産されますが、そのうち玉露はわずか300トン、京都府産の玉露となると150トン、さらに茶葉を手摘みした「本玉露」は、0.1%にも満たない貴重なお茶だそうです。

一保堂はお茶を扱う歴史が長いことから、「覆下園」の茶葉を得意としていて、京都府産の玉露のうち約1割を扱っています。玉露の銘柄は8つあり、そのうち上から3つ(上から「天下一」「一保園」「甘露」)は手摘みの玉露です。

玉露に似たお茶として「かぶせ茶」があります。これは、前出の3つの条件からはずれたもので、たとえば棚をかけずに直接覆いをかけたものなどが一例です。
茶の木に直接覆いをかけると、露天園で育つ煎茶に比べて、色は青みがかった緑色が強くなり、コクと旨味が増します。玉露風のお茶ですが、一保堂では取り扱っていないそうです。

玉露として扱われるのは、ピンと針のようにヨリがかかった新芽だけですが、お茶を余すところなく味わいつくすため、「本茶(本当のお茶ということで、こう呼ばれます)」からはみ出してしまったものも「出物(でもの)」というお茶の一種として扱われます。

玉露の小さな葉っぱにヨリがかかってくるくると丸まっているため、かたちが「芽」のように見える「芽茶」
茎の部分ばかりを集めた「玉露 雁ヶ音」(雁ヶ音とは、茎茶を意味します)。
玉露の粉になったところを集めた「玉露粉」がそれで、玉露のバリエーションとして扱われています。

試飲として、まず登場したのは、「玉露=高級茶」のイメージを裏切る「ティーバッグ」です。
といっても一保堂のティーバッグは違います。葉がしっかり開くよう、大きなゆとりのあるティーバッグでした。
この中には「芽茶」が入っています。
芽茶は玉露より、ややほろ苦いのですが、旨味と甘味は引けをとりません。

ここでひと息。玉露へ入る前に、他の種類も味わいます。

続いての試飲は、抹茶の「関の白(かんのしろ)」。
「裏千家流(第三回のリポートをご参照ください)」に泡立てた抹茶は、甘味と渋み、爽快感のバランスがとれた味わいが特徴です。

試飲の三番目は、煎茶の「芳泉(ほうせん)」。甘味・渋味・香りがバランスよく感じ取れるお茶で、余韻が長く、後口がまろやか。
一保堂で、好みの味を見つける目安としている味わいがこれです。

試飲の四番目は、番茶の「若柳」。番茶は葉肉が肉厚で大きいため、煎茶のような針のようにヨリがかかってピンとしたかたちにはなりません。ガサッとした形状が柳に似ているため、京都では、番茶の銘柄に「柳」とつけることが多いそうです。「柳」はいわば番茶の原型。これを焙じると「焙じ茶」、炒った玄米を加えたものが「玄米茶」です。
 ちなみに、煎茶のなかでもすそのランク(下のランク)のものは、柳に似てさっぱりした味わいなので、関東では食後のお茶などに好まれるようです。

試飲の五番目は、いよいよ玉露、しかも手摘みの「甘露」を体験します。
今回は、前回まで使っていた急須ではなく、玉露用の小さな急須が登場。茶葉に合ったサイズの急須を使うことで、くっと味がしまって、濃厚な旨味を味わえるそうです。

さて、お茶をおいしく淹れるためのポイントは、「茶葉の量」「湯の温度」「抽出時間」。
今回も、この3つを守りつつ、お茶を淹れていきます。

茶葉の量は、付属のスプーンにたっぷり山盛り2杯の10g。
量が少ないとおいしさを味わえませんが、多すぎても葉が開ききらず、旨味が出切りません。まずは、お茶を購入する際に目安となる分量を確認し、そこから増減して好みの量を見つけるのがよいそうです。

湯の温度は、60度。
甘味・渋み・香りを溶出する目安は、80度が分岐点でした。80度より高いと、抽出時間は短く、渋味が出やすくなります。80度より低いと、抽出時間は長くなり、渋味が出にくいのが基本です。今回は60度で、渋味を出さず、旨味と甘味だけを引き出します。

「苦味と渋味は湯温と時間に正比例し、一定の味を越えるとエグみに変わることもある」。これを覚えておくだけで、おいしいお茶を淹れる一助になります。

抽出時間は、1分30秒。長いです。が、待つ時間も玉露の楽しみとのこと。

今回は、参加者全員に3客の茶わんと急須が用意され、まずは基本に忠実に玉露を淹れてみます。
ちなみにお湯の量は、お茶碗1客の約8分目。これで2杯分です。
ごくごくと飲むのではなく、充実した一滴を楽しむのが、玉露の楽しみです。

湯を冷ますには、器を移し替えます。ひとつの茶碗に移し替えるごとに、だいたい5度から10度ほど下がると考えればよいようです。
今回は、お茶碗1つにつき1分3客で計3分、急須に入れて1分30秒、計4分30秒待ちます。長い! けれどもその分期待が高まります。

待ってる間に、つい茶葉を開かせようと、急須をゆすりたくなりますが、それは厳禁。澄んだ山吹色になるはずの水色(すいしょく)が濁ってしまい、味に雑味が出て、といいことは何もないそうです。
お茶を注ぐときは急須を何度も傾けたり戻したりせず、一気に注いで最後の一滴まで出し切り、急須の本体を軽くぽんぽんと叩いて茶葉をならし、急須のふたを切っておく(少しずらしておく)と、2煎目以降もおいしく飲めます。


こうして丁寧に淹れた玉露の味の深いことといったら! この独特の甘味により、玉露は外国人、とりわけヨーロッパ人から人気が高いそうです。

ここでお菓子が登場しました。毎回趣向を凝らして、京都からわざわざ運んでいただくお菓子も、このシリーズの魅力です。

本日は、祇園「甘泉堂」の「京の名どころ」と、「菱屋」の「うすばね」です。
「京の名どころ」は、干支の方角と、その方角にある京都の名所が描かれています。
わたしのところにやってきたのは、干支が「卯」、名所は「知恩院」「南禅寺」「永観堂」でした。
「うすばね」は、その名の通りはかないくらいに薄いおかきです。さくさく、軽やかな歯触りを楽しみます。

まだまだ「玉露」の世界は続きます。

試飲の第六番目は、玉露のなかではさっぱりした「萬徳」です。
これを熱湯で、抽出時間20秒で淹れます。すっきりした味わいは、上品なお弁当にも合いそう。

そして最後の最後。
試飲の第七番目には、玉露の最高峰=京都で最上、最高級と言ってもいい「天下一」を、究極の方法「氷水で1時間かけて抽出したもの」を味わいました。

とろりんと舌に乗り、ほわっとまず甘さがきて、飲んだ後には、まるで上質な一番だしを飲んだ後のように、長く余韻を残す旨味・・・・・・!
だれもが無言になるような体験でした。


奥深いお茶の世界は、まだまだ学びたいことが山積しています。今後は、パティシエとお茶を組み合わせた、和と洋のコラボレート企画も計画しています。
今回参加できなかった方からのアンコールはもちろん、参加した方からの提案もお待ちしています。



<ご案内>

 

「お茶の間」という言葉は死語に近くなっていないでしょうか?以前はどの家にお茶の間があり、そこでの家族団欒がありました。懐かしい光景ですが、住宅の洋風化は容赦なく押し寄せ、ダイニングルームとなり和食から洋食に、日本茶から紅茶やコーヒーに・・・という方も増えています。

ですが、食後は日本茶という方は多いはず。ペットボトルの日本茶は厳密には「お茶飲料」、日本茶風味のものが手軽に味わえるという点では便利ですが、お茶を自分で美味しく淹れる機会を減らしてしまった、その原因の一つでもあるかもしれません。

今月観た文楽の作品にこんな場面がありました。「こんな出涸らしの茶が飲めるか!」と怒って茶碗からお茶を捨て、茶屋の親父さんに淹れ直させた嫌な奴が出てきました。

まずいお茶ほど気分を悪くさせるものはありませんが、逆を言えば美味しいお茶を飲むと本当に幸せになります。「ああ日本人に生まれて良かったぁ」と思います。

以前ギリークラブで京都小旅行に行った時に一保堂さんにお邪魔し、短時間ではありましたが日本茶セミナーをして頂き感銘を受けました。それでご縁が出来、それからこんな事が一緒に出来ないかと、相談をしながら準備してきましたが、実現に至りました。

一保堂さんに4週連続で京都から東京に出張して頂き、日本茶セミナーを実施して頂けます。

以下に概要を記しますが、毎回煎茶、抹茶、番茶、玉露をテーマに基本を学び、茶葉の選び方、淹れ方、楽しみ方、保存法などをお聞きし、勿論毎回テーマのお茶を菓子と一緒に頂戴してなごみます。、

日本人ならこれは知っておきたいものです。美味しいお茶を淹れたら、お客様に本当に喜ばれます、というより仕事が上手くいくかもしれません。

淹れる方も、飲む方も、何が美味しい日本茶なのかを知っておいた方が、幸せで潤いのある人生がおくれます。そんな事が学べる貴重なチャンスです。

平日昼間ではありますが、どうぞ調整してお出かけください。4回シリーズですが、1回だけでも、2回だけでも全く問題ありません。ご都合が付く日にお出で下さい。

「お茶を濁して」自分の気持ちをごまかさず、自国の文化として大切な日本茶を学びませんか?奮ってのご参加お待ちしています。

(一保堂さんからのメッセージ)
一保堂茶舗は京都 寺町二条に本店を構える日本茶専門店です。
一保堂では、抹茶、玉露、煎茶、番茶類の日本茶で、穏やかな味と香りが特長の「京銘茶」を中心に取り扱っております。

またお茶をお売りするだけでなく、茶葉の魅力をお伝えすることも大切な役目の一つと認識し、「お茶の淹れ方教室」を開催しています。

今回は抹茶、玉露、煎茶、番茶類と茶種ごとに、日本茶の畑から製造工程、大切な淹れ方から日常生活の楽しみ方まで試飲も交えてお伝えする教室を開催します。まずはご自身で体験しながら、日本茶を知って、味わって、楽しんでください。

<参考>

渡辺が2005年に日経ビジネスアソシエに書いた原稿です。
http://nba.nikkeibp.co.jp/yamatokabure/1st/15.pdf

当時、若手ビジネスパーソン向けに日本文化指南を連載しており、
「真の国際化とは自分の国を知ること」がコンセプトの連載でした。

<参考サイト>

●一保堂茶舗
http://www.ippodo-tea.co.jp/

●日本茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/

●煎茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/

●抹茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/

●番茶 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/

●玉露 『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/

<実施概要>

●日本茶を知り、楽しむ4週
仕事中、食事中、日々何気なく飲んでいる日本茶。抹茶・玉露・煎茶・番茶と聞いたことはあるけれど一体何が違うの?意外に知らないことがたくさんあると思います。そんな日本茶をご紹介するセミナーを開催します。まずは知って、味わって、楽しんでみませんか?興味のある茶種に参加するもよし、全てのお茶と仲良くなるもよし。お茶を一服どうぞ。

●日時:6月2日・9日・16日・23日(毎週水曜日)15:30〜17:00

●会場:丸の内カフェ2F
千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1F  TEL : 03-3212-5025
http://www.marunouchicafe.com/access/index.html

●募集: 各回10名

●会費:このページの最後の各回の詳細案内をご参照下さい。

●締切:5月24日(月)
(それ以前でも満員の際には締め切ることもあります。)
※満員の際、キャンセル待ちは可能です。

<第 4 回>

●日本茶を知り、楽しむ (4) 玉露を楽しむ

●日時 6月23日(水) 15:30〜17:00

●会費 正会員 4,000円 ビジター 6,000円

<テーマ >
名前は聞いたことがあるし、一度は飲んだことがあると思うけど、一体どんなお茶なの?とのご質問が多い玉露。玉露と煎茶の違いはもちろん、お客様へのおもてなしや贈り物に役立つ情報をお伝えします。

●ウェルカムドリンクとご挨拶
・抹茶を氷水点てでご用意します。

●日本茶ってどう違うの?
・畑の違いから製造工程など、日本茶って何なのかをまずお伝えしていきます。
・抹茶・玉露・煎茶・番茶類と日本茶それぞれ味わいの違いを試飲を交えてお伝えします。
・抹茶、玉露、番茶を試飲いただきます。

●玉露を淹れるポイントは?
・茶葉を急須に入れてお湯を注ぐだけ。でもこの中にもポイントはたくさんあります。そのポイントをお伝えしてきます。

●玉露淹れ方体験 季節のお菓子とともに
・ご自分で急須を使って体験いただきます。1人2客ずつ淹れてご近所さんと交換してみると、同じように淹れても味わいの違いが!これも急須で淹れる面白さです。

●玉露の選び方&贈り物に使うには?
・一保堂は玉露の品揃えが豊富に8銘柄あります。それぞれ違う味わいについてや贈り物に使う際の選び方など、シチュエーションに合わせた玉露を試飲も交えてご紹介します。お取引先への贈り物を選ぶ際にもお役立てください。
・会議の時、大勢にお茶を淹れる

●とっておき玉露の楽しみ方
・ゆったり楽しむ玉露を究極に味わうにはやはり氷水出し。最上級玉露を冷たく冷やして至福の一服をどうぞ。
・氷水出し玉露をご用意します。

●お茶の保存方法
・せっかく買い求めた抹茶。美味しく飲んでいただくためには点て方と同じく大切なのが保存方法です。

●質疑応答