『今月の焼き魚 12月 鱈(たら)と白子(しらこ)』
〜築地でたらセミナー&塩焼きを食べる〜
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<ご報告>
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今月の焼き魚、一応最終回でした。
ただし、こんなに良い会、時間は無いという皆さまのお考えの元、というか渡辺がそう思っているのですが、考え方・食べるものを拡大して築地で魚を食べる企画、2011年は新たにスタート&継続します。ご期待下さい。
しかし年末の築地、本当に混んでいました。噂には聞いていましたが、凄いものです。実はオプション企画で小川さんと市場見学したのですが、特に場外などはまともに歩けないほどで、11月に訪問した香港以来の活気を感じ嬉しくなりました。しかし他県ナンバーの車ばっかりで、小川さんと二人、「あ、北海道ナンバー」、「あ、関西ナンバー」、「あ、北陸」・・・と少年のように車を見ていたおじさん二人の年末築地、ちょっと新撰&ほっこりでした。
工藤史歩さんのレポートお読みください。(渡辺幸裕・記)
「魚食べ民族=日本人」が誇る食文化をいま一度見直し、おいしく魚を食べる人気企画「今月の焼き魚」。
毎月、その月に味わいのピークを迎える魚について学び、食べるシリーズも、12月をもって最終回を迎えました。
そして、この最終回に、シリーズ初の衝撃的な事件があったのです・・・!
この企画に参加したり、リポートを読んでくださっている方はご存じだと思うのですが、講師の小川貢一さんの持論は、「魚本来の持ち味をもっともおいしく味わえる調理法は"塩焼き"と"刺し身"」。そのため、このシリーズでは、毎回、その月の「テーマ魚」を刺し身と塩焼きで味わってきました。
そんな小川さんの持論を、シリーズ最終回にして打ち破った魚・・・! それが、今月のテーマ魚「真ダラ」です。
「真ダラ」の特徴は、水分が多く、脂がほとんどのっていないこと。水分が多いため痛みやすく、鮮度が落ちるとアンモニア臭がするため、新鮮なうちに塩をするなどして水分を抜くことが必要です。
また、脂質がないため、焼くと身が乾いてパサパサした食感になります。
さらに、身はあっさりと淡泊で、つまりうま味が薄い・・・。
ん? タラって何だか「いいとこなし」な魚・・・?
というビミョーな空気が一瞬漂ったのですが、まさかそんな魚が「テーマ魚」に選ばれるはずもなく。タラにはいいところもいっぱいあります。
まず、タラは世界中で漁獲でき、身ばなれがよく食べやすいので、世界の食文化に受け入れられています。ポルトガルなどが特に有名ですよね。
また、生体数が多く養殖の必要がないので、すべてが「天然もの」です。ちなみに日本では、太平洋側では銚子から北で、日本海側では島根より北で、漁獲量が多いそうです。
次に、身に水分を多く含むということは、きちんと脱水すれば、保存ができるということ。塩ダラや干ダラは、保存食として貴重です。また、脂がほとんどないので、冷凍しても身の痛みが少ないのも長所です。
味わいは、うま味が薄いということは、裏を返せばクセがなく、どんな調理法や食材にも合うということ。骨が大きく、身質は繊維が粗くて、ペロッと身ばなれするので、扱いやすく、フライなどにも向きます。
ちり鍋といえば「西のフグ、東のタラ」と言われるそうで、脂が出て汁ににおいを移すこともなく、野菜など他の食材の味わいを邪魔することもなく、鍋ものにぴったりの魚です。
というわけで、「刺身」は、真ダラそのもののうま味だけでは弱いので、昆布締めにしてうま味を補います。
また、「塩焼き」は、「パサつくギリギリのところで塩焼きにしてもよかったのですが、真ダラにたりない脂をちょっと補ってやればおいしく食べられることがわかっているのに、塩焼きにするのはかわいそうで」という小川さんの"真ダラ愛(?)"により、ステーキでいただきます。
本日も、ギリークラブらしく、真ダラはオスとメスの両方を味わいます。オスは根室産、メスは函館産。玉子と白子も味わう贅沢な体験です。
それでは、今月の献立を、写真と合わせてどうぞ。
<先付け> 真鱈仔がらみ 真鱈肝味噌煮 昆布チップ
仔がらみは、シラタキとともにさっと煮た定番料理。シラタキに絡めて、つぶつぶした食感を味わいます。
一同が唸ったのは、肝の味噌煮。タラは身には脂がないのですが、肝には脂が多いため痛みやすく、1日たつと臭みが出てしまうそうです。そのため、水揚げした漁港では、これまで肝は捨てられていたそうです。
ところが、いざ食べてみると、アンコウの肝やフォアグラに負けない、まったりと濃厚でとろけるような舌触りと、強いコクとうま味があり、これが絶品。
鮮度が抜群の肝を、弱火でゆっくりと煮ると、この味わいになるそうです。これは純米のどっしりした日本酒がほしくなる味。
「いい七味をちょっと振ってもいいかも」「豆腐と一緒に煮て、豆腐にうま味を吸わせてもおいしそうだ」と、参加者からの意見も次々にあがりました。
小川さんは、今後、真ダラの肝をお酒のつまみとして活用できないか、メニュー開発に取り組んでいくそうです。
昆布チップは、食べやすい大きさにカットして素揚げしたもの。パリっとした食感です。
<お造り> 真鱈昆布〆
実は、会の冒頭でメニューを見た参加者が、口々に「そういえば、料理屋さんでタラの刺身を食べたことがない」と、興味津々に待っていたのがこれ。参加者はみなさん食いしん坊ばかりで、飲食店での経験も豊富です。それなのに、誰もタラの刺身を食べたことがないとは・・・。
登場した真ダラの刺身は、手前が腹側、奥が背側の身です。しっかり塩をして脱水し、昆布締めにして昆布のうま味を移し、味を補っています。
あめ色でねっとりとした食感の腹側は、昆布のうま味がよく入っています。
一方、背側は身が厚く、どちらかといえばタラの味が勝っていて、くにゅんとした頼りない歯ごたえ。
つまり、プロがじっくり手と時間をかければ刺身でもおいしく食べられるけれど、刺身は、真ダラ本来のよさを生かした調理法ではないんですね。料理屋さんでタラの刺身を見かけないのは、ちゃんと理由がありました。
<焼物> 真鱈ステーキ 白子ステーキ
そして、こちらがメ塩焼きよりおいしいモ真ダラの調理法「ステーキ」です。「今月の焼き魚」シリーズ初の洋食です。
こちらも塩をしっかりして、きっちり脱水するのがポイント。さっと粉を打ち、表面にカリッとした食感をプラスして、中には火を通し過ぎません。
特に白子は火を通しすぎず、中がアツアツになった半生で、かじると口中にアツアツのとろりが流れ込みます。
バターソースで脂とコクを加え、アクセントにガーリックパウダーを少しだけ振りかけてありました。
白子は、湯引きしてポン酢とあさつき、もみじおろしが定番の食べ方ですが、ステーキにすると、より濃厚なコクが出て、抜群の存在感でした。
<逸品> 鱈ちり鍋
いつもなら、ここで小川さんの創作料理が登場するのですが、今日は「タラをもっともおいしく食べる鉄板の調理法」ちり鍋です。ちり鍋は、ポン酢をさっとつけて食材自体のうま味を味わう鍋。家庭では、栄養バランスを整えようと、ついついたくさんの具材を入れて、味を濁らせてしまいがちですが、寄せ鍋とは違うので、あまり多く具材を入れないのが、おいしく食べるコツだそうです。
今日の鍋はタラを中心に、シイタケ、水菜、白菜のシンプルなものでした。もちろん、タラにはしっかり塩をして脱水します。
<お食事> 鱈雑炊 香の物
真ダラのアラでとった出汁の雑炊です。なんとアラにも、しっかり塩をして時間を置き、脱水してうま味を凝縮したそう。シンプルに玉子でとじた、出汁を味わうさらさらの雑炊でした。
<甘味> 「蕨餅」わたなべさん好み(茂助だんご)
築地の甘味といえばここ、茂助だんご。「今月の焼き魚」シリーズの定番です。
こちらのメニューは、ギリークラブの紹介で予約をすれば、同じような(その日の仕入れによります)メニューのコースを味わえます。
なかでも肝味噌煮は、ぜひ食べていただきたい一品・・・ですが、入荷は難しいかも。どうぞお早めにご予約をお入れください。
また、1月からは「今月の焼き魚の会」が進化した「魚を食べる」シリーズ企画、その名も「築地で魚を喰らう」が始まります。スピンオフとして開催された「マグロサミット」のように、テーマ性のある企画が目白押しです。
第一回目は、1月29日に開催される「牡蠣」です。真牡蠣を中心に、育った地域の水によってどのように味わいが異なるのか、食べ比べを行う予定です。
第二回目は、2月12日に開催される「フグ」です。フグは、2月9日の「フグの日」あたりがもっともおいしくなるそう。てっさ、てっちりのほか、焼きフグなども登場する予定です。
そのほか「繊細な味わいの白身魚を食べ比べる」や「一夜干しと生魚の味わいを食べ比べる」「マグロの熟成よる味の違いを食べ比べる」などの企画も構想中。2011年もおいしい魚を、おいしく食べる企画になりそうです。
余談ですが、小川さんに習った通りに、自宅でタラちり鍋をやってみました。いつもより味がぐんとグレードアップしたので、わたしなりのポイントをお伝えします。
スーパーで買ったタラの切り身には、しっかり塩をして、脱水した水分をよく拭き取ります。合わせる野菜も、クセのある春菊などはやめて、シイタケ、水菜、白菜と小川さん流を踏襲。そして、ぽん酢だけはちょっといいものにして、あさつきはいつもよりずっと細かく切りました。小川さんの調理を見ていると、加熱し過ぎないのがコツなので、食べる分だけ鍋に入れて、半分しゃぶしゃぶ状態で、タラはアツアツになったところを、野菜はしゃきしゃきした食感が残っているうちに食べます。
こんな簡単なポイントに気をつけるだけで、いつもの鍋とはまったく違う味わいに・・・・・・! まだまだ寒い日が続き、お鍋がおいしい時期ですので、ぜひみなさまもお試しください。
真鱈子仔がらみ |
真鱈肝味噌煮 |
真鱈昆布〆 |
真鱈ステーキ&白子ステーキ |
真鱈ステーキ |
白子ステーキ |
鱈ちり鍋 |
鱈雑炊 |
鱈雑炊 から |
蕨もち |
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番外編<年末の築地市場> |
番外編<年末の築地市場> |
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番外編<年末の築地市場> |
番外編<年末の築地市場> |
番外編<年末の築地市場> |
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<ご案内>
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1月:鰤(ぶり)、2月:鰆(さわら)、3月:さくら鱒(ます)、4月:鯛(たい)、5月:伊佐木(いさき)、6月:時鮭(ときしらず)、7月:鱧(はも)、8月:秋刀魚(さんま)、9月金目鯛、10月は秋鯖と毎月食べ続けています。
焼き魚の会ですが、刺身、煮魚、と盛りだくさんで、実はその魚を美味しく食べるいろんな料理を楽しみ、みんな本当にお腹いっぱいになって解散、となります。
ここに各回の様子があります。
凄いですよ。
1月 ぶり http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0123.shtml
2月 鰆 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0219.shtml
3月 さくら鱒 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0320.shtml
4月 鯛 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0424.shtml
5月 いさき http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0524.shtml
6月 時鮭 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0619.shtml
7月 鱧 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0717.shtml
8月 さんま http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0828.shtml
9月 金目鯛 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/0930.shtml
10月 秋鯖 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/1030.shtml
11月 赤睦 http://www.gillie.co.jp/g_club/seminar2010/1126.shtml
そして次回は12回目、1年間続いたのですね。
年末の築地、12月18日(土)12時スタート、魚は鱈(たら)と白子(しらこ)親子の塩焼き競演(!?)です。
「鱈の塩焼き」、魚篇に雪と書く冬を代表する魚、鍋に入れたり、湯豆腐の魚としてもポピュラーですが、これの塩焼きは美味しそうです。
塩焼きを含め、毎回のメニューは全て小川さんにお任せ、もう何も言いません。それが一番美味しいものが食べられるからです。鱈と白子、親子の塩焼きも小川さんの発案、有難い事です。
“たらふく”という言葉は、鱈が大食いでお腹が膨れるから、という都市伝説があります。実は“足りる”という言葉が変化したらしいのですが、いづれにせよ、毎回「たらふく」になる事は間違いないです。
先月の会もそうでした。「これは歩かなくては・・」と思わされ、いつも銀座まで2駅分歩きます。
でも、、、築地という魚のレベルが高い街でも、こうやって、毎月焼き魚を食べ続けるグループは、そうそういません。美味しい魚を食べる集団の存在が街の方を勇気づけますし、何と言っても、食べた方自身の記憶に残ります。
毎回、魚が出てくるたびに、シーンとなって食べています。ある意味変な集団ですが、そんなに焼き魚に集中する事も、普段の生活ではあり得ない事です。
家の食卓、友人との食事会、ましてや会食などではあり得ない、そんな事をしたらコミュニケーションが取れませんし、失礼な事です。でも、この場ではそれが当たり前なのです。
一回ぐらい、焼き魚に全神経を集中する時があっても良いでしょう。そういう方達が集まっているのですから、気にすることはありません。こう書くと魚オタクの集まりの様ですが、そんな事は無いのです。
一瞬その時は皆さん真剣になって味わい、感想を述べ合いますが、その後はワイワイがやがや、魚以外の事もどんどん話をしています。その交流を楽しくする為、共通体験としての小川さんの魚セミナーと、「今月の焼き魚」を食べる時間があるのです。
そんな楽しい雰囲気です。常連で固まっている訳ではありません。どの会からいらしても、過去に来てなくても、その時から仲間入りです。勿論お一人でも全くOK、直ぐに同好会入りです。
どうぞ気楽に、気軽にお出かけ下さい。これがギリークラブの特徴でもあり、主宰者は楽なのです。奮ってのご参加お待ちしています。
今回はまた土曜の昼に実施します。年末の築地は大変な混みあいが予想されますが、この時期だとまだ平和、ゆっくりと言ってもそこそこ混んでいますが、買い物を楽しめます。
また年末用の魚等を下見するのも良いかと、朝早く言ってぶらつくのも良し、焼き魚を食べて腹ごなし(これが毎回必要なのです)もまた一興です。
年末のご調整をされて、ぜひお出かけ下さい。ご返事お待ちしています。
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<参考サイト>
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●築地 魚河岸三代目 千秋 はなれ
http://www.3daime.jp/index.htm
●全国の旬のお魚
http://www.jf-net.ne.jp/jf-net/syun/zen_index.html
●築地魚河岸三代目 ウィキペディア(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org
●鱈(たら)ウィキペディア(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org
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<実施概要>
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●『今月の焼き魚 12月 鱈(たら)と白子(しらこ)』
〜築地でたらセミナー&塩焼きを食べる〜
●日時:12月18日(土)12:00〜14:00
11:45 受付開始
12:00 鱈(たら)&白子(しらこ)セミナー
12:15 食事開始
13:45 食事終了 何でも質問会
14:00 終了
オプション企画・小川さんと歩く築地市場
希望の方は9:30集合です。
●会場 築地 魚河岸三代目 千秋 はなれ
中央区築地4丁目7番5号 築地共栄会KYビル B1F
tel:03-3543-8700
http://www.3daime.jp/index.htm
築地共栄会KYビルの地図
http://www.tsukijikyoueikai.co.jp/map.html
●ゲスト:
小川 貢一氏 (同店 店主)
●会費:メンバー 8,000円 ビジター 10,000円
(セミナー代、料理代、記録費 他)
※飲み物は個人精算して下さい。
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