日本を知らない日本人のための渡辺の連載、“日本(やまと)かぶれ”
42テーマを取材して2008年3月で終了しました。大変勉強になり、視野が広がった取材&執筆でした。
日経ビジネスアソシエという、20代、30代の若手ビジネスパーソンが、“仕事を上手くこなす為の情報を求める目的”で購入する雑誌で、日本文化に関しては殆ど無関心、「和楽」や「サライ」など最初から文化的な事に興味があって行動する人ではない読者向けに書きました。
「真の国際化とは自分の国を知ること」
毎回これを繰り返し提案した企画でしたが、これだけの回数、期間ではまだまだ大半の読者には伝わっていないと思いますし、世の中全体を見てもそうだと思います。今後も様々な場で主張して行こうと思っています。
渡辺が日本文化超初心者の為の会、和・倶楽部を作ったのが2002年、その後ギリークラブの一環として継続し現在でも様々な活動を続けておりますが、「日本かぶれ」はそれとは少し違った視点、ビジネスパーソン対象ということでユニークな取材が出来ました。これだけ長く書かせて頂いた事に、アソシエ編集部の皆様には心より感謝しております。
取材を通じて感じたのは、各分野で頑張っている方は間違いなく世界に通用するということでした。私は素人ですから日本の政治や経済が世界でどのレベルで評価されているのかは分かりませんが、間違いなく日本文化は世界から高く評価されています。最近青柳の小山裕久氏と一緒にパリで日本料理のセミナーを実施していますが、かの地でも痛感することです。
そのように評価されている日本文化(別に伝統芸能という意味ではなく、それも含めた生活文化そのものですが)に関して我々日本人がどれぐらい知っているのか、はなはだ疑問だと思います。自分の胸に手を当ててみてもよく分かります。
ギリークラブの仲間と京都の台所を訪ねる小旅行に行きましたが、有次さんの包丁研ぎ教室、一保堂さんの日本茶教室などで、本当に自分が何も知らない事を痛感し、同時にこういう方達が居る事を同じ日本人として誇りに思いました。
行くだけでは決して専門家になることは出来ませんが、これはどういうもので、どのような楽しみ方があり、ここに行けば詳しい人がいる、事は知ることができます。こういう知識を持つ事は、ビジネスをする上で大変役に立つはずです。
外国の方と話をする際は勿論ですが、日本人同士で話をする時にも、その内容に幅と深みが出てきますし、視野が広がります。と言うことは、『日本文化はビジネスに活用できる』という事です。 外国語で仕事をするのは今後は必然でしょうし、ビジネスパーソンは、当たり前のようにメールでやり取りしていますし、ちょっとひとっ飛びで現地での打ち合わせも日常茶飯事です。“島国”という言葉は死語に近くなっています。
ビジネススキル、マナーを身につける、国際的な視野を持つ、長期的な視点で考える、これらと同時に“自分の国を知る”事はビジネスに役に立ちます。良い事も悪い事も含めて自分の国を知り、次に相手国の歴史や伝統、文化に敬意を払って交流すれば素晴らしい関係ができるはず、そのためにはまず自分の国を知ることです。は明白です。
あるレベルに達するためには時間が必要ですし、訓練が欠かせません。地道な積み重ねを軽視するような修行では本物の実力はつきません。本物のビジネスパーソンであればよくお分かりの基本中の基本です。
ある程度の期間、自分をそこに置いてみて初めて分かることがあります。変化が早い時代ではありますが、四季は早送りは出来ませんし、植物や動物の促成栽培が不自然になる事はお分かりの通り、自然な時間の流れでしか得られないものがあります。
たったの4時間歌舞伎座に身を置く暇も無いのでしょうか?
何か一つ自分が清清しくなれるものを身につけるため週に1時間を作り、それを数年続けられたらどんなに自分が変わるでしょうか?
それがビジネスに役立ち、ひいては素晴らしい人間関係が出来るというのなら、やってみる価値はあるはずです。
今後も『日本文化はビジネスに活用できる』という視点で、様々な企画を実現させていきたいと思っています。その際にはお誘いいたしますので、共鳴して頂ける方とご一緒させて頂ければ嬉しいです。
2008年12月 日本文化超初心者代表 渡辺幸裕